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16.夏とプールと日焼け止め(1)
俺は〝梅雨 〟という名の雨季があまり好きではない。
大雨の日は傘を差してもスーツは濡れるし、スーツを着て営業周りをするという仕事の性質上、長靴を履いていくという選択肢がないため、俺の革靴は常にびしょびしょになるからだ。
つい先週までは特に本降りの日が多く、ジメジメした天気が続いていたが、七月に入るとやや快晴の日が多くなってきた。
学校へ行くミオにレインポンチョを着せ、傘を持たせ、長靴を履かせる回数が減ったのは素直に嬉しい。
なぜ嬉しいかというと、ポンチョや長靴などの重装備であれば雨は凌 げるだろうが、今度は内側から蒸れて汗をかくのだ。
それが原因で風邪を引かせるわけにはいかないのだから、俺は早く梅雨明けしてくれればいいと思うのである。
それに、梅雨が明ければ、子供たちが大好きなプールでの授業も大いに楽しめるだろうし。
ミオの一目惚れで購入した、動物のイラストがプリントされたプールバッグを活用できるのも、この時期ならではなのだから。
「ねぇお兄ちゃん。明日からね、学校でプールに入れるようになるんだよ」
「そっか。ここんところずっと雨だったからなぁ、ずいぶん遅いプール開きになっちゃったな」
「うん。それでね、ボクたちのクラスは明後日からプールの授業があるの」
そう話すミオは嬉しさ半分、ドキドキもまた半分といった感じだ。
「そりゃまた急だな。ミオは泳いだ事はあるのかい?」
「んーん。全然ないよー」
「だったらプールに入った事は?」
「うーんとね。施設にいた時に、お庭でまーるいプールを作ってくれて、そこで遊んだ事はあるかな」
あぁ、いわゆる〝ビニールプール〟というやつだな。
「じゃあ学校のプールは初めてなんだね。あれはまーるいプールとは違って底が深いから気をつけるんだよ」
「そんなに深いの?」
「一応、ミオより小さい学年の子でも入れるようになってるから、足はつくと思うけど……」
心配なのは、泳ぎ方を知らないミオが思わぬ水深に驚いて、パニックを起こす事なんだよなぁ。
何より、この子は運動が苦手だし。
といっても、授業中は常に先生がついてるし、他のクラスメートの子たちと一緒に授業を受けるから、溺れたりしてもすぐ助けてもらえるとは思うけど。
「そういや、水着のサイズは丁度よかった?」
「まだ着てないんだ。見てみたい?」
「え?」
「ちょっと待っててね。今から着てくるー」
「お、おいおい……」
ミオは自分の部屋に駆けて行ってしまった。
水着を着てくるって、それって上半身裸になるってこと?
いや、さすがにそこまでする必要はないよな、今から泳ぐわけじゃあないんだから。
と、思ったその数分後。
ミオは、さも普通であるかのように上半身裸の、水泳パンツ一枚という姿で部屋から出て来た。
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