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16.夏とプールと日焼け止め(5)
「わぁ、いっぱい日焼け止めが入ってるー」
「プールだけじゃなくて、学校までの道のりとか、休みの日にお出かけする時なんかも日焼けするかなと思ってさ。その時のために、あらかじめ多めに買っておいたんだ」
「じゃあ、明日は学校に行く前に塗っておけばいいの?」
「そうだね。プールの授業がない日は、服で隠せない部分に塗るだけで大丈夫だと思うけど」
「なるほどー」
「俺も自分用に買ってあるから、晩ごはんを食べたら、後で一緒に日焼け止めを塗る練習をしてみよっか」
「うん。練習したーい」
練習にワクワクしているのか、ミオは目を輝かせながら返事した。
やる事は単純に日焼け止めの塗り方を予習しておくだけなのだが、子供にとっては、きっとこういう初めての体験も楽しみの一つになるんだろうな。
というわけで俺たちは、少し遅めの晩ご飯を食べ、洗い物を済ませた後、さっそく日焼け止めを塗る練習を始めた。
手始めにやったのは、腕と足への塗り方。
ネットで詳しく調べてみたところ、日焼け止めの塗り方にも部位によって違いがあるらしく、手足には線状に長く付け、優しく伸ばすのがいいそうだ。
この線状に付けた日焼け止めをストローに見立てて〝ストロー付け〟と呼ぶのだという。
「んー。ひんやりするぅー」
左腕に日焼け止めを塗ったミオが、その冷感で小刻みに震える。
クーラーの効いた部屋でやっているから、程よく冷やされた体には、尚更冷たく感じることだろう。
「はは、夏にはこのくらいが丁度いいかもな」
「ねぇお兄ちゃん。日焼け止めって、すごくいい匂いがするんだねー」
ミオは日焼け止めを塗った腕に鼻を近づけ、すんすんと匂いを嗅いでいる。
「どれどれ?」
俺もミオと同じように、自分の腕に付けた日焼け止めを顔に近づけ、その匂いを確かめてみた。
「おー、確かにそうだね。ミルクタイプって書いてあるから、牛乳っぽい匂いなのかな? って思ったけど、何だかほのかに花のような香りが……」
「うんうん。お花のいい匂いがするよね」
俺は生まれてこの方、日焼け止めなんて一度も塗った事がなかったから分からないけど、こういうのは元々香り付きだったのかなぁ?
たぶん無香料もありはするんだろうが、どうせならいい匂いがするものがいいよな。
それがセールスポイントの一つになるのかも知れないわけだし。
特に女の子は日焼け止めが欠かせないから、周りの人へのアピールとか影響なんかを考えて、商品選びをするはずだ。
そう考えると、いい匂いがする日焼け止めというのは、やっぱり売りの一つになるんだろうな。
「ぬりぬりー」
ミオは日焼け止めを両手足に付け、楽しそうに伸ばしている。
ほんのりと花の香りがするショタっ娘か、こりゃますます女の子と間違えられそうだな。
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