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16.夏とプールと日焼け止め(6)

 さて、手足への塗り方と伸ばし方を覚えたら、今度は顔と首周りだ。  まず顔への塗り方だが、額や鼻、頬などの各部位に、真珠くらいの大きさの日焼け止めを付けて伸ばすといいらしい。  というのを口で説明するのは簡単だが、ミオは真珠の実物を見たことがないため、その大きさを説明するところから始める必要がある。  かくいう俺も真珠にはてんで詳しくないので、モデルガンなどに用いるBB弾くらいの大きさを想定して、手のひらに乗せて見本を見せた。  これを顔のあらゆる場所に塗り、すり込むのではなく、優しく丁寧に、ムラ無く伸ばしていくのがコツなのだそうだ。  しかし、ムラが無いようにとは言っても、この作業は鏡を見ながらじゃないと難しくないか?  ミオにも実際にやらせてみたが、案の定、鏡無しでは塗り忘れというか、伸ばしきれていない部分がハッキリ分かった。  塗り残しがあると、そこが日焼けした時に、顔が模様になりそうで心配になる。  というわけで、俺が満遍(まんべん)なく伸ばせるよう、手伝ってあげる事にした。  ……そういや、頭を撫でたり頬ずりされたりする事はよくあるけど、こうやってミオの顔に触れるのって、実は初めてじゃないか?  ヤバい。そう考えると、何だかすごくドキドキしてきたぞ。 「ど、どうかな。痛くない?」 「大丈夫。お兄ちゃんの手、温かくて大好きだよ」  くぅー、かわいい。そんな事を言われたら、尚更意識してしまうじゃないか。  俺はミオの額や頬に触れ、伸ばしきれていなかった部分へ、優しく指を()わせる。  その間、女の子座りをしたミオは(あご)を上げ、じっと目を閉じ、まるでキスされるのを待つかのように……。  撤回、今のは撤回!  俺って奴は、なんていやらしい事を想像しているのか。  今やっているのは、あくまで日焼け止めの塗り方を教えているだけであって、それ以上の事は何も起きてはいけないのだ。  ミオだってそのつもりで目を閉じているだけだというのに、俺が勘違いして変な気を起こそうものなら、二人の仲がへ突っ走ってしまいかねない。  俺は理性を保つのでいっぱいいっぱいだったが、何とか塗り残しがある部分まで日焼け止めを伸ばし終え、ミオの顔から手を離した。 「もう終わっちゃった?」  ミオが目を閉じたまま尋ねてくる。 「うん。全部綺麗に伸ばせたよ」 「ありがと。お兄ちゃんにお顔を優しくなでなでしてもらってるみたいで、すごく気持ちよかったよー」 「そっか。まぁ顔にするマッサージもあるから、そういうのに近い感覚はあったのかもね」  最初はフェイシャルエステと言おうと思ったが、ミオには難しい横文字だし、結局そのエステの施術にマッサージが含まれるので、そのままマッサージと表現した。

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