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17.夢のリゾートホテル(1)
ようやく長い梅雨が明け、カラッとした天気が続く七月の半 ば。
夏休みを数日後に控えたミオは、残り少ない水泳の授業がある日を、指折り数えて楽しみにしている。
俺が子供のころもそうだったからよく分かるが、やっぱり子供は水遊びが好きなんだよな。
少しずつではあるが泳ぎもうまくなってきているらしいし、上達する楽しみを実感しながらの授業は、きっとやりがいがあるのだろう。
でも、一学期はもう少しで終わっちゃうんだよなぁ。
ミオの通う学校の告知によれば、夏休みに入るとプールの水を全部抜いて清掃し、来年まで空にして閉鎖するとのこと。
よって、今年の水泳の授業は夏休みまでで終わってしまうのだ。
昔は市民プールの代わりのような感じで、夏休みも子供向けに学校のプールを開放していて、俺もかなりお世話になった。
ただ、近年は事情が違う。
夏休みに開放されたプールでは、通常PTAの保護者が当番を担当していたそうなのだが、その当番のなり手がいない事も閉鎖の一因になるらしい。
あと、いくらプールの水に浸かっているとは言え、炎天下で長時間遊んでいると、児童が熱中症を起こすおそれもある。
その熱中症になった事の責任を学校側に持てというのも無茶な話で、そんなリスクを背負うくらいなら、最初から開放しない方がマシじゃんという話になるのである。
非常に世知辛い話で子供にも気の毒なのだが、学校の判断も決して誤りではない。
なので夏休みになったら、ミオに思いっきり水遊びを楽しんでもらおうと、海にでも連れて行こうかと考えたのだ。
それがこの間、日焼け止めを買ってきた翌日の話。
しかし、ここで問題が一つある。
俺たちが住んでいるところから一番近い海水浴場でも、夏休みになると、泳ぐスペースもろくに無くなる程の混みようを見せるのだ。
人混みが苦手な俺たちがそんなところへ行っても、まず楽しめないだろう。
かと言って遊泳禁止の場所へ連れて行くわけにはいかないし、何かいい方法は無いものかな。
なんて事を考えていると、終業を知らせるチャイムが聞こえてきた。
とりあえず今日はやる事も全部やっちゃったし、残業は無しでいっか。
ミオのために早く家に帰って、クーラーの効いた部屋で一緒にテレビでも見ながら、夏休みの計画を考えよう。
俺は資料や筆記用具を引き出しにしまい、荷物をカバンに詰め、帰り支度を終えて席を立つ。
すると、少し離れた斜め前のデスクでは、何やら電話であわただしく話をしている同期の男、佐藤の姿が目に入った。
電話といっても、佐藤が今使っているのは会社の固定電話ではなく、プライベート用のスマートフォンだ。
何だかやたら焦ってるみたいだけど、どうせあいつの事だから、女の子を飲みに誘ってドタキャンされたとか、そんなところだろう。
と思ったら今度は、通話を終えた佐藤が、この世の終わりみたいな表情で頭を抱え、机に突っ伏した。
……もしかして、フラれたか?
ただ、飲みの約束がフイになっただけにしては、様子がおかしいな。
佐藤ほどの強心臓ならすぐ次に切り替えるというのに、今日はあんなにもヘコんでいる。
一体何があったんだろう、ちょっと話でも聞いてみるか。
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