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18.初めての通知表(1)

 学校に通う子供たちにとって待ち遠しいのが、一学期を終えた後に突入する長期休暇、夏休みである。  俺が子供のころは、夏休みの始まりといえば、七月二十日の祝日である〝海の日〟からと決まっていた。  だが、途中から法改正により、海の日は〝七月の第三月曜日〟という事になったため、現在は二十日より前に休みに入るようになったのだ。  海の日は祝日なので学校は休み。  その前日の日曜日は言うまでもなく休みだし、ミオの通う小学校では学校週五日制を導入しているため、土曜日も休みになる。  よって、その前の日である金曜日が終業式となり、今年の場合は、法改正の前よりも三日程夏休みが長くなるのだ。  そういうわけで、ミオはその金曜日である本日、終業式に出席し、通知表を受け取り、そして夏休みの宿題を渡されるだけので帰って来たのだった。  こういう半ドンの日に俺がまだ会社にいる場合は、ミオのお昼ご飯をどうするかが課題になる。  出かける前にお金をポンと渡して、コンビニで弁当でも買わせる手もあるのだが、それだと少し愛情に欠けるかなぁと思うのだ。  なので、昨日のうちに大量に作っておいたカレーの残りと、冷蔵庫にあるポテトサラダを「好きなだけ食べてね」と言付けしておいた。  他の料理はてんで自信は無いものの、カレーだけは簡単で作り慣れもしているので、味に関してはたぶん満足してくれると思う。  ミオは基本的に少食なので全部平らげる事はないだろうが、万が一足りなかった時のために、お菓子も多めに買い置きしてあるから大丈夫だろう。  今日は、ミオにとって初めての通知表が見られる日だ。やる事をやってしまったらさっさと帰るとするか。 「柚月(ゆづき)、お疲れさん!」  終業を知らせるチャイムが鳴り、そろそろ帰り支度をしようかというころ、同僚の佐藤が俺のデスクまでやって来た。 「お疲れ。佐藤も、今日はもう仕事終わりかい?」 「せや。しかも明日から三連休やろ? こういう日は早よ帰って、夜の街でネーチャン引っ掛けに行くんや」 「はぁ。お前もよくやるねぇ」  この調子だと佐藤の奴、もうユキちゃんにフラれた心の傷はすっかり癒えてそうだな。 「こないだの事、いつまでも引きずってられへんからな。今日からは将来の嫁さん探しや」 「将来の嫁さんか……」  そう言われて、先日、ミオに妊娠とは何かという話をした時に、成り行きでミオと結婚する約束をしちゃった事を思い出した。  あの子をうちに迎え入れて一ヶ月ちょい経つが、もう、俺の頭の中はミオの事でいっぱいだ。

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