119 / 832

19.いざ、リゾートホテルへ(2)

 ミオが心配する気持ちはよく分かるが、これ以上夜更しをすると、明日もし晴れた時、元気に遊び回るだけの気力と体力に影響が出るおそれがある。  そこで俺は、電気スタンドの近くに置いていたスマートフォンを手に取り、最新の天気予報をチェックする事にした。  できるだけポジティブ、つまり晴天になる可能性が高そうな予報が載っているサイトを探すこと、およそ数分。  俺はようやく、一つの予報サイトに行き着いた。 「ミオ、見てごらん。明日の天気は、晴れる確率が五十パーセントだってさ」 「え、ほんと?」 「うん。てるてる坊主がお願いを聞いてくれてるのかも知れないよ」  ほんとは降水確率が五十パーセントって意味なんだけど、今そんな事を打ち明けると、また不安要素が増えて眠れなくなる。 「よかったな、これで明日の天気をしなくて済んだじゃん」 「ほんとに大丈夫かなぁ」 「大丈夫さ。この予報の通り、きっと明日は晴れてくれるよ。だから心配するのはこれでおしまい! 俺はもう、明日に備えて寝ちゃうからね」 「あっ。待ってぇ、お兄ちゃん」  ミオは、改めて横になった俺にすがり付き、胸板に顔をすり寄せる。 「ボクも一緒に寝るー」 「うん、一緒に寝よう。いい子いい子してあげるから、安心しておやすみ」 「んー、お兄ちゃんのいい子いい子大好き……おやすみなさい」  不安材料が取り除かれ、優しく頭を撫でられて心が満たされたのか、ミオはじきにスヤスヤと寝息をたて始めた。  この天使のような寝顔をずっと見ていたい気持ちもあるけど、明日に響いちゃまずいから、さすがに俺も寝ることにしよう。  ――それから数時間後。  長い夜が明け、いよいよと言うかついにと言うか、とにかく運命の日を迎えた。  俺が目を覚ました時には、ベッドにはミオの姿がなかったので、あの子はすでに活動を開始しているものと思われる。  相変わらず早起きだなぁ、朝が弱い俺とは大違いだ。  でも顔を洗ったり、服を着替えたりとか、家の中で活動している気配はない。  ふと枕元の目覚まし時計を見ると、時刻は六時半を指していた。  この時間帯なら、ミオは今ごろ、近くの公民館前でラジオ体操に参加しているのだろう。  待てよ。という事は、もしかして雨は上がったのか?  耳を澄ましても雨音は聞こえないし、窓の外からは朝日が差し込んできているように見える。  ……よかった、ほんとに晴れたんだ。  こうしちゃいられない。ミオがいつ帰ってきてもいいように、朝ご飯を作っておかなくては。 「お兄ちゃん、ただいまー」  俺の起床からおよそ三十分後。  カリカリに焼いたベーコン入りの目玉焼きを皿に盛り付けていると、ミオが元気よく帰って来た。 「お帰りー」 「ラジオ体操に行ってきたよ!」 「ごくろうさん。地面は濡れてなかったかい?」 「うん! すっかり乾いてたよー」  と、ミオがニコニコしながら答える。  どうやら二個のてるてる坊主は、俺たちのお願いを聞いてくれたようだ。  正直、俺も天気の心配は拭えないまま寝てしまったのだが、この分なら、今日は予定通りに事が進められるだろう。

ともだちにシェアしよう!