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19.いざ、リゾートホテルへ(1)
夏休みに入り、俺たち二人が泊まる日を心待ちにしていた、ハイクラスなリゾートホテル。
その名は、ジャパン・エリオット・スターホテルという。いかにもロイヤルな響きだ。
県内で唯一の離島に建てられたそのホテルの一番の売りは、海に隣接しているという事。
それゆえに、部屋からの眺望 は極めて良好で、昼夜を問わず、オーシャンビューが楽しめるのだという。
さらに、ホテルの敷地内には、宿泊者限定が利用できる砂浜、すなわちプライベートビーチがある。
そこでは泳いだり、マリンスポーツや各種アクティビティで遊んだり、あるいは近くの堤防で魚釣りをしたりと、各レジャーが充実しているため、夏場はビッシリと予約が埋まるのだそうだ。
で、俺とミオはそんなホテルに泊まれる権利を格安で譲ってもらったのだが、宿泊前日である今日は、無情にも一日中どしゃ降りという最悪の天候だった。
昨日のうちに、俺とミオで一個ずつ〝てるてる坊主〟を作って、ベランダに吊るしてまでお天気の願掛けをしたのに、この始末。
宿泊する明日までに雨が止まなかったら、せっかくのリゾート施設や各種アクティビティが、全部フイになってしまう。
雨天決行してまで海で遊ぶ、なんて危険行為はもってのほかだし、まずホテル側からストップがかかるからだ。
一応二泊はするから、もう一日分の余裕があるとは言え、そのもう一日が晴れの日になるという保証はどこにも無い。
困ったなぁ、梅雨は明けたんじゃなかったのかよ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「雨……止まないね」
時刻は夜の十一時半すぎ。
ベッドの上で横になり、俺の腕に抱かれたミオが、悲しそうな顔でそう言った。
いつもは明るく元気なミオの、そんな顔を見るのはほんとに辛い。
普段なら、この時間になるとミオはぐっすりと眠っているころだ。
だが今日は、まるで滝の流れのようにザーザーと大きな音を立て、容赦なく降り続ける雨に不安と心配の気持ちを抱き、なかなか寝付けないのだろう。
ここは俺が、何とかミオを励ましてやらなければ。
「ミオ、二人で一生懸命てるてる坊主を作って吊るしただろ?」
「うん」
「ミオがずっといい子にしてたから、てるてる坊主もきっと、お願いを聞いてくれるよ。だから今日はもう、心配しないでお休み」
「でもぉ……」
ミオにはまだ気がかりな事があるようだ。
「テレビの天気予報を見たら、明日とあさっては、傘の絵が出てたよ?」
「うっ。そ、そうだったかなぁ」
今日に限っては、俺はあえてテレビを見ないように努めていたのだが、ミオは意外と情報を重視する現実主義のようだ。
ミオが見た天気予報によると、週間予報では、この一週間は軒並み天気が悪いとの事。
あくまで週間予報だから、必ずしもその通りにはならない可能性もあるが、この子を不安な気持ちにさせるには充分な材料となる。
それに加えて、現在進行系で降り続けている、空気の読めない大雨。
お百姓 さんたちには恵みの雨かも知れないけど、だからって、一時間に五十ミリはさすがに降りすぎだろうに。
その激しく粒の大きい雨の音も、ミオにとっては寝付けないほどのノイズと心配の種になっているというのに、ほんと自然ってのは気ままなものだよ。
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