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24.初めての海水浴(7)
「やったー。お城ができたよ、お兄ちゃん」
「いいね、綺麗にできてるじゃん。ミオ、粘土細工とかも向いてるかも知れないね」
「そう?」
「例えばさ。ビルとか、トラックみたいなのを作ったらうまくいきそうな……いてっ」
ミオとの話の途中で、突然、俺の背中に軽い何かがポーンと音を立ててぶつかり、特に痛くもないのに、反射的に声が出てしまう。
後ろを振り向いて、その何かの正体を確かめてみると、小さめなビーチボールが一つだけ、点々と転がっていた。
誰かがこのボール遊びをしていて、キャッチしそこねたのが、俺のところへ飛んできたのかな。
ボールを持ち上げて周囲をキョロキョロ見回し、持ち主を探していると、少し離れたところから、一人の男の子が慌てた様子でこちらへと走ってきた。
「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
足を取られる砂地を裸足で全力で駆けてきて疲れたのだろう、男の子は両膝に手を置き、下を向いたまま息を切らしている。
パッと見た感じ、この子もミオと歳は同じくらいで、背格好もほぼ似ているな。
髪の毛は鮮やかなブロンドヘアーで、お花のブローチがアクセントになっているカチューシャを付け、長い髪をまとめている。
ん? もしかして女の子なのか?
ハーフパンツの水着らしきものを穿いているから、たぶん男だと思うのだが、なにぶん袖の短いTシャツを着て胸が隠れているため、今ひとつ判別がつかない。
「うん、大丈夫だよ。君こそ疲れちゃってない?」
「いえ、もう平気です。ほんとにごめんなさい、僕がボールを取りそこねちゃって……」
申し訳無さそうに顔を上げたボクっ子は、ミオにも負けず劣らずの、美少女のような顔立ちをしていた。
と言うか、この子は美少女そのものじゃないか?
うちのミオみたいに、女の子とも見分けがつかないほどかわいいショタっ娘がこの日本にそうそういるわけでもないだろうし、この子が下に穿いているものも、きっと男女兼用のハーフパンツなのだろう。
「僕、いつもこうなんです。運動をするのが苦手だから、ボール遊びも上手にできなくて」
運動が不得意な子は、俺のすぐ身近に一人いるから気持ちはよく分かる。
「ボールが当たった事は別に気にしなくていいよ。それに、誰にだって苦手なものはあるしね」
「でも、ご迷惑をかけちゃいました」
「そんな事言わなくていいってば。はい、これ返すから、また楽しく遊んでおいでよ」
「ありがとうございます! ……お兄さん、優しいんですね」
ボールを受け取ったその子は頬を薄紅色に染め、憧れでも抱いたかのような瞳で、俺の顔を見つめてきた。
お、これは惚れられたかな?
昨日、縁結びの神社で末小吉のおみくじを引いた事のご利益が、今になって効果を見せているのか。
もう恋愛運の項目に何が書いてあったのか忘れたけど。
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