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25.リゾートホテルの昼休み(2)
「お兄ちゃん、これなーに?」
「ん?」
ミオが持っていた長方形の物体には、四面全てにハンドベルのイラストが描かれており、四角柱の頂点にボタンと思わしき平べったい突起がある。
「あ。それが呼び出しボタンだよ」
「呼び出しボタン?」
「そう。何を食べるか決まったら、店員さんに注文しなきゃいけないだろ?」
「うん」
「遠くにいる店員さんをここまで呼ぶために、そのボタンを押すんだよ」
「そうなんだ。ねぇ、押してもいーい?」
「おいおい、まだ何も決まってないだろ。それを押すのは、何を食べるか決まってからにしよう」
「はーい」
普通のいたずらっ子ならここでボタンを押してウエイターさんを困らせるんだろうが、さすがにミオは聞き分けのいい子だ。
さて、このレストランのランチメニューは何があるのだろうか。
お手軽にオムライスとか食べたい気分なんだけど、こういう高級感溢れるお店では作ってないんだろうなぁ。
「お昼ご飯のメニューは、この〝翔風楼和洋御膳 〟ってのと、佐貴島牛 のハンバーグ定食、それからシンプルに和食ランチってのがあるな。どれもドリンク付きみたいだね」
「うーん」
ミオは目を凝らして、各メニューの写真を見比べている。
なにぶんにも掲載されている写真が小さいので、顔を近づけてよく見ないと、何が出されるのか分からないのだ。
「ボク、この和食ランチにするー」
「どれどれ? へぇ、刺身と天ぷらの盛り合わせがメインなのか。なかなかいいじゃん」
「でしょ?」
天ぷらの写真を詳しく見てみると、今の時期は夏野菜のオクラとエビ、そしてキスが揚げられるらしい。
刺身は何だろう、違う魚種のものがそれぞれ二切れずつ盛られているが、切り身だけでは何の魚なのかは分からない。
でも、刺身といい天ぷらといい、魚が好きなミオにはうってつけのメニューだよな。
「お兄ちゃんはどれにするの?」
「俺は和洋御膳にするよ。何かいろいろ乗っかってて、珍しいもの見たさもあるしね」
「じゃあボタン押すねー」
「うん。頼むよ」
ミオが嬉々として呼び出しボタンを押すと、ピピッという、俺たちだけにしか聞こえないくらい小さな音が鳴った。
それから間もなくウエイターさんがテーブルにやって来て、オーダーを取る。
ランチとセットで付くドリンクだが、俺は烏龍茶を頼み、ミオは大好きなオレンジジュースがメニューに無かったので、代替品としてグレープフルーツジュースに決めた。
さすがにランチだけあってお値段はリーズナブルに設定されているものの、使っている食材は割と質のいいものが多いような気がする。
今回は注文しなかったが、佐貴島牛 のハンバーグ定食なんかは、地元のブランド牛の肉を用いて作っているわけで、これに白飯はもちろん、汁物やサラダ、ドリンク付きだというのだから、相当な割安感がある。
牛肉は、ホテルぐるみで地元の畜産農家と契約していたりして、安く調達できるとかそういう事情があるのかな?
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