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25.リゾートホテルの昼休み(3)

「ねぇお兄ちゃん」 「ん?」 「ご飯を食べ終わったら、どっちから先に乗るの?」  というミオの質問は、昨日の作戦会議で乗ることに決めた二種類のボートのうち、どちらを先に楽しむのか、という事を尋ねているのだ。  まず、一つ目がペダルボートで、これは足漕ぎで動かすタイプのもの。  プライベートビーチの、海水浴客たちが泳いでいる区画から離れたエリア内で、足でボートを漕いで遊覧するという遊びである。  そしてもう一つがグラスボートで、これは沖合いまでゆっくりと船を走らせ、船の中央にあるガラスから海底を覗き、魚やサンゴ礁などを眺めて楽しむ事ができるサービスだ。  いずれも水には濡れずに済むボートで、かつ、子供のミオにも危険が及ばない安心なアクティビティなので、昼からはこの二つのボートに乗ろうと決めたのである。 「んーとな。このパンフレットによると、グラスボートの出航時間はスケジュールが決まってるから、だいたい一時間おきに乗れるかどうかが決まるらしい」 「え? 乗れなかったりするの?」 「定員があるからね。例えば二十人乗りのボートに、俺たちより先に待ってる人が二十人いたら、また一時間待たなきゃいけないんだよ」 「そうなんだ。じゃあ、空いてそうな時間を選んだほうがいいのかなぁ」 「それはあるかもね。もしくは、グラスボートに乗る予約をしておくとかだな」 「予約できたらいいよねー。その時間までに他の事をして遊べちゃうんだもん」 「そうだね。じゃあご飯を食べたら、まずはグラスボートに乗る予約ができるかどうかをチェックしに行こうか」 「うん。楽しみだなぁ」  などと、午後から楽しむアクティビティなどについて話し合っていると、ウエイターさんが料理と飲み物を運んできた。 「ご注文は以上でよろしいですか?」 「はい、とりあえず以上で」 「それでは、ごゆっくりどうぞ」  特にデザートなどを追加で頼む予定はないのだけど、「とりあえず」と答えてしまうのは、居酒屋なんかに行った時のクセかな。  俺が注文した和洋御膳には、白飯ではなく炊き込みご飯が盛られていた。  そして肝心のおかずだが、まずほうれん草と枝豆、マッシュルーム、そして細かくカットしたベーコンをオリーブオイルで和えて、ほんのり塩味を付けてあるサラダが一つ。  それから茶碗蒸しと、小皿に乗った一口サイズのロールキャベツや、三切れの合鴨ロースに、トマトソースで煮込んだ豚肉などが食卓を彩る。  輪切りにされたパイナップルは、おそらくデザート枠なのだろう。  普段はこういう上品な料理を食わないので新鮮に感じるし、何よりうまそうだ。  朝は海水浴で思いっきり体を動かしたから、とにかく腹が鳴って仕方がない。さっそくいただくとしよう。 「うん、このサラダはうまい!」  前菜のサラダに思わず舌鼓(したつづみ)を打ってしまったが、とにかくうまいものはうまい。  オリーブオイルにじっくりと浸してあるせいか、ほうれん草のシャキシャキ感こそは無いが、ここに茹で上がった枝豆をプラスしてあるので、食感としては申し分ない。  そして何より、ベーコンの塩味が他の食材を引き立てているため、どんどん食が進む。  これだけでご飯のおかずになりそうだ。  一方ミオの方は、小鉢に盛り付けられた刺身を箸でつまみ、しげしげと興味深げに眺めていた。

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