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27.再会、そして(2)

「お兄ちゃん、会社の人って何人くらいいるの?」 「そんなに大きな会社じゃないから、だいたい百人ちょっとってとこだな」 「じゃあ、おみやげもその人の分だけ買うの?」 「いやいや、さすがにそこまではしないよ。俺がいる部署の人にだけ渡すつもりだから、まぁ二十人分くらいかな」 「それでも二十人いるんだねー」 「うん。その二十人に配れる、お菓子のおみやげが欲しいんだけど……」 「それじゃ、いっぱい入ってるのがいいんだよね」 「まぁそうだな。いっぱい入っていて、それでいておいしいのがベストかな」 「分かったー。ボクも探してみるよ」  赤の他人へのみやげ物選びなんて本来つまらん作業だろうに、ミオは進んでお手伝いをしてくれる。  この子はほんとにできた子だよ。  俺もミオにばかり頼っていないで、佐藤と、会社のみんなに喜んでもらえそうな物を探さないとな。  ざっと見た感じだと、空港とか駅の売店に並ぶような、箱に入った銘菓は割といろいろある。  えーと、これは佐貴島バウムっていうのか。  輪っか状のバウムクーヘンを小さく切って、小袋に入れて箱に詰めてあるんだけど、今ひとつパンチが効いていないんだよなぁ。  きょうびバウムクーヘンなんてコンビニですら買えるし、味に何らかの工夫が欲しいんだよな。  それから、こっちのお菓子はサキ・マドレーヌって名前なのか。  ホタテ貝みたいな形をした小さな焼き菓子、マドレーヌが三十六個入り。  数としては申し分ないな。  マドレーヌは個人的に好きだし、製造元や販売元はこの島の製菓メーカーだから、俺が重視する条件もクリアしている。  会社の人へのみやげ物としては、これで充分かなぁ。  一応これはキープという事で、他にもどんなお菓子があるのか探してみよう。 「お兄ちゃーん」  しばらく銘菓コーナーを物色していると、ミオが包装紙でくるんである、大きな箱を持って戻って来た。 「これ、どうかな?」 「どれどれ……〝亜麻色(あまいろ)うさぎ〟?」 「かわいいウサちゃんのお菓子だよー」  包装紙に描かれているお菓子の絵は、その名の通り、丸まったウサギの形をしている。  カスタードクリームを亜麻色に練った生地に包んだ商品らしく、そのカスタードクリームにはの果汁が混ぜ合わせてあるのだそうだ。  かぼすといえばもうお馴染み、ここ、佐貴沖島(さきのおきしま)の特産物だから、みやげ物としてはなかなか的を射たチョイスだと言える。 「いいね、これ。見た目がかわいいし、数もたくさん入ってる」 「でしょ? でね、あっちに試食できるコーナーがあるんだよ」 「へぇ、試食もできるんだ。んじゃ、ちょっと食べてみようか」 「うん」  ミオに手を引かれ、亜麻色うさぎの箱が積んであるコーナーにやって来ると、そこでは透明なアクリル板で出来た箱の中に、四分の一サイズにカットされたお菓子がたくさん詰まっていた。  どうやらこれが、試食できる亜麻色うさぎのようだ。

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