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27.再会、そして(1)

 観光ホテルの売店というと、地元なんかのみやげ物を売ってあるのが一般的だ。  〝なんか〟というのは、まれに地元に関係ない商品が並んでいる場合もあるため、注意が必要になってくるのである。  例えばもみじ饅頭。言うまでもなく、広島県産みやげとして全国に名を馳せている和菓子類のおみやげなのだが、なぜか山口県のホテルでも売店で買える。  これは俺が修学旅行に行ったときの経験談なので嘘ではない。ほんとに買えるのだ。  人に言わせると〝心の問題〟なのかも知れないが、通販などの特殊なケースを除き、ご当地の名産品は、ご当地で買ってこそ意味があると俺は思うのである。  広島県ではない観光地に行ってきて、そこで買ってきたみやげ物がもみじ饅頭だった場合、その人は果たして、どんな感情を抱くだろうか?  少なくとも、俺はそういうところを重視する人間なので、観光地でみやげ物を買う時は、必ず製造元と販売元の住所を逐一確認する事にしている。  さて、このホテルでは一体何を売っているのかな。 「ねぇお兄ちゃん。カツオのポテトチップスがあるよー」  会社と佐藤へのみやげ物選びについて来てくれたミオが、ご当地みやげが並ぶ陳列棚から、一つの袋菓子を持って来た。 「何だこりゃ。初めて見るポテトチップスだなぁ」 「ね。これ、袋に描いてあるカツオがキラキラしてるから、一番に目に入ったの」 「なになに? 『ご当地、佐貴沖島(さきのおきしま)名物! かぼす果汁配合、カツオのたたき風味!』だって」 「えー、何それ? 変なのー」  ミオが頭の後ろで腕を組んで、呆れた様子で感想をもらした。  確かに変だわこりゃ、かぼす果汁配合でカツオのたたき味って、要するにタレとかぼすの味がするだけじゃないのか。  販売元も全国に展開している大手の製菓会社だし、この島がそんなにカツオで有名だなんて初耳だし。  でも、こういう一風変わったお菓子も、一度ネタとして食べてみるのも有りではあるよな。 「ミオ、これ買って食べる?」 「んー。ボクは晩ご飯でカツオを食べたいから、お菓子のはいいかなぁって……」  まだ十歳の子供に、ものすごく気を遣った返事をさせてしまった。  そりゃそうだよな、さっきのグラスボートに乗ってた時、ディナーバイキングで本物のカツオ料理を食べたいって言ってたのに、カツオ風味のお菓子を食べても何ら感動はしないだろう。  というわけでこれは無し。  ミオに変な商品を戻してもらい、俺たちはまず、会社の人たちへ贈るみやげ物を選定するべく、ご当地銘菓が並ぶコーナーへと足を向けた。

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