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27.再会、そして(11)

「ん? どうした?」 「お兄ちゃんとボクで、レニィ君たちと一緒に遊んであげられないかな」 「うーん。そうしてあげたいのはやまやまなんだけど、もう夕飯時だぞ。今からでも開いている施設といえば、ゲームコーナーか、カラオケルームくらいしか……」 「じゃあ、そのカラオケに連れて行ってあげようよ!」  これは意外だ。さっきまでレニィ君の事を警戒していたであろうミオが、打って変わって、あえて如月兄弟をカラオケに誘おうと提案してきたのである。  察するに、ミオも、レニィ君たちの今置かれている境遇が、自分の生い立ちに重なって見えたのかも知れない。  だから、このまま放ってはおけなかったのだろう。 「ね、いいでしょ?」 「そりゃまぁ、ミオがOKならぜひ誘ってあげたいけどさ。この子たちは時間的に大丈夫なのかな」 「レニィ君に聞いてみようよ。ねぇねぇレニィ君」 「……は、はい! 何でしょうか?」 「夜になったら、ボクたちと一緒にカラオケに行かない?」 「カラオケ、ですか?」 「うん。弟の子も連れて行ってさ、みんなで歌おうよ。きっと楽しいよー」  カラオケ未経験のミオが、レニィ君を元気づけようと、一生懸命気を回してくれている。  何かの折に触れる度に思うが、ミオはほんとに心の優しい子だよ。  この子が学校に通い出してから、男女分け隔てなく友達が作れたのも、こういう気配りがしっかりできているからなんだろうな。 「そういうわけでどうかな、カラオケ。時間さえ大丈夫なら……だけど」 「ありがとうございます、すごく嬉しいです! きっと弟も喜んで来ると思います」 「そっかそっか、そりゃよかった。んじゃあ、温泉から上がったら、時間と待ち合わせ場所を決めちゃおうか」 「はい、ぜひ!」 「ところで弟くんは?」 「あ。ユニィなら今サウナに入ってます。あの子は珍しいものが好きだから」  レニィ君の弟はユニィ君っていうのか。その子もやっぱり、母親似だったりするのかな?  というか、今日びサウナってそんなに珍しいかなぁ? と思ったが、両親が常に不在でどこにも連れて行ってもらえなかったら、こういう普通の温泉施設自体が新鮮に見えるんだろうな。  そういう点では、うちの青髪の子猫ちゃんにも似たようなところがあるから、分からない話ではない。  我が家に迎え入れて以来、初めて見るものには何にでも興味を持って、納得がいくまで俺にいろいろ尋ねてくるし。  見知らぬものに対して好奇心を抱き、誰かに教えてもらったり、実際に体験したりするのは、大人になるための社会勉強として、大変有意義な事だ。

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