200 / 833
27.再会、そして(11)
「ん? どうした?」
「お兄ちゃんとボクで、レニィ君たちと一緒に遊んであげられないかな」
「うーん。そうしてあげたいのはやまやまなんだけど、もう夕飯時だぞ。今からでも開いている施設といえば、ゲームコーナーか、カラオケルームくらいしか……」
「じゃあ、そのカラオケに連れて行ってあげようよ!」
これは意外だ。さっきまでレニィ君の事を警戒していたであろうミオが、打って変わって、あえて如月兄弟をカラオケに誘おうと提案してきたのである。
察するに、ミオも、レニィ君たちの今置かれている境遇が、自分の生い立ちに重なって見えたのかも知れない。
だから、このまま放ってはおけなかったのだろう。
「ね、いいでしょ?」
「そりゃまぁ、ミオがOKならぜひ誘ってあげたいけどさ。この子たちは時間的に大丈夫なのかな」
「レニィ君に聞いてみようよ。ねぇねぇレニィ君」
「……は、はい! 何でしょうか?」
「夜になったら、ボクたちと一緒にカラオケに行かない?」
「カラオケ、ですか?」
「うん。弟の子も連れて行ってさ、みんなで歌おうよ。きっと楽しいよー」
カラオケ未経験のミオが、レニィ君を元気づけようと、一生懸命気を回してくれている。
何かの折に触れる度に思うが、ミオはほんとに心の優しい子だよ。
この子が学校に通い出してから、男女分け隔てなく友達が作れたのも、こういう気配りがしっかりできているからなんだろうな。
「そういうわけでどうかな、カラオケ。時間さえ大丈夫なら……だけど」
「ありがとうございます、すごく嬉しいです! きっと弟も喜んで来ると思います」
「そっかそっか、そりゃよかった。んじゃあ、温泉から上がったら、時間と待ち合わせ場所を決めちゃおうか」
「はい、ぜひ!」
「ところで弟くんは?」
「あ。ユニィなら今サウナに入ってます。あの子は珍しいものが好きだから」
レニィ君の弟はユニィ君っていうのか。その子もやっぱり、母親似だったりするのかな?
というか、今日びサウナってそんなに珍しいかなぁ? と思ったが、両親が常に不在でどこにも連れて行ってもらえなかったら、こういう普通の温泉施設自体が新鮮に見えるんだろうな。
そういう点では、うちの青髪の子猫ちゃんにも似たようなところがあるから、分からない話ではない。
我が家に迎え入れて以来、初めて見るものには何にでも興味を持って、納得がいくまで俺にいろいろ尋ねてくるし。
見知らぬものに対して好奇心を抱き、誰かに教えてもらったり、実際に体験したりするのは、大人になるための社会勉強として、大変有意義な事だ。
ともだちにシェアしよう!