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28.夜遊びの約束(7)

「そうだね。二人とも顔つきや声がそっくりだったから、髪型と性格で見分けるしかなさそうだな」 「お兄ちゃんはどっちが好きなの?」 「えっ!?」 「恋人にするなら、レニィ君とユニィ君、どっち?」  ミオは俺に密着し、小悪魔的な笑みを浮かべながら、とんでもない質問をぶつけてきた。 「ちょ……ちょっと待ってくれよ。そんなの決められないよ」 「どっちもかわいいから?」 「いや、確かにかわいいけどさ。答えちゃってもいいの?」 「ん? どういう事?」 「今の質問って、俺を他の子に取られちゃう前提で聞いてるだろ」 「え、え、違うよー」 「いいのかなぁー。ミオと結婚の約束をしていたのに、あの子たちと浮気しちゃっても」 「ダメぇー!」  ちょっといじわるな答え方をしてみたら、激しく動揺したミオは、全力で俺にしがみついてきた。 「お兄ちゃんは誰にもあげないよ! ボクがお嫁さんになるんだからぁー」 「はは、冗談だって。俺は誰とも浮気しないよ」 「ほんと?」 「ああ、ほんとさ。きちんと約束しただろ?」 「……そだね」 「だから、俺は絶対に、あの子たちのどっちとも恋人にはならないよ。こんな答えでいいかな?」 「うん。ごめんねお兄ちゃん、ボク、変な事聞いちゃったよね」 「いいんだよ。ほんとは心配だったんだろ?」  俺はそう問いかけながら、ミオの頭を優しく撫でる。  子供なりの力で強く抱きついているミオは、俺のわき腹の辺りに顔をうずめたまま、こくりと頷いた。  さっきのロビーラウンジでは楽しく会話をしていたつもりだったけど、この子は、内心では不安で仕方なかったんだろう。  世界で一番好きな人が、突然現れた他の人と結ばれてしまうなんて、胸が張り裂けそうなくらい辛い事だからな。  だから、さっきは俺の、ミオへの想いを確認したいという意図があって、わざと如月兄弟の名前を出して質問してきたんだ。  いかにふがいなくて女っ気が無く、女心のひとつも汲み取れないような俺でも、そのくらいは察しがつく。  もう、ミオとは一ヶ月以上、ずっと一緒にいるんだからな。  でも不思議なのは、ミオは俺の浮気相手に関して、自分と同じショタっ娘が対象になるのではないか、と思っている事。  そこに〝女性〟という可能性は全く無いのである。  かつて、俺が女の子にモテないってのを打ち明けてしまったから安心しきっているのか、それとも、女の子よりも、年の小さい男の子の方が魅力的だと感じているからなのか……。  まぁ間違いなく前者だろうな、後者は俺がそういう感情を抱いているだけだから。  今更だけど、ハッキリと気付いてしまったんだよ。  大人の女性と付き合って散々振り回された挙げ句、捨てゼリフを吐かれフラれたあの時よりも、今、恋人感覚でミオと甘い生活を送っている今の方が、よっぽど幸せなんだって。

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