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37.デパートを満喫しよう!(4)

    *  お魚さんのイラストが描かれた子供用の浴衣と、大好きなアニメのおもちゃを買ったあとは、お楽しみのランチタイムだ。  デパートの八階にあるレストラン街へ足を運ぶと、各店舗の立て看板や、ガラスショーケースに並ぶ食品サンプルの数々が、俺たちの目に飛び込んできた。 「お兄ちゃんはどのご飯が好き?」 「え、俺かい?」 「うん。いつもお出かけする時はボクに合わせてくれてるでしょ? だから、今日はお兄ちゃんの好きなものを食べて欲しいの」 「優しいなぁ、ミオは。こういうデパートに来るのは初めてなんだから、ミオが選んで良いんだよ」 「んー、だけど……」  やはりどこかで気を遣っているのか、ミオが申し訳無さそうにもじもじする。  俺に優柔不断なところがあるからこそ、ミオの意向を汲んでお店を決めようと思ったのだが、あんまり恋人を困らせるのも良くないな。 「よし、だったらこうしよう。ミオが食べたいものを、そして俺が行きたいお店を選ぶんだ。それなら、二人で決めた事になるだろ?」 「なるほどー。それじゃボク、お魚さんの料理が食べたーい」 「ふふっ。ミオはほんとに魚が大好きだね」 「あ! でも、お魚料理を作ってくれるお店、あるかなぁ」  先ほどとは打って変わって、今度は下唇に人差し指を当て、心配そうな顔をするミオ。  俺は、こんな感じで表情がくるくると変わったり、あらゆるリアクションを見せたりするミオの天真爛漫(てんしんらんまん)なところが好きだ。  何と言うか、俺は自分に無いものを持っている女の子に惹かれやすい性格なんだよな。  ミオは男の子だけど。 「とりあえず魚料理を出してそうなお店を探してみるか。で、このソバ屋さんはソバと丼ものがメインだから、今回はパスだな」 「そだね」  俺たちはソバ屋の横を通り抜け、斜め向かいにある小洒落た喫茶店から漂うコーヒーの香りを愉しみつつ、店内の一角を占めるレストランへと向かう。  店内の様子をチェックしてみると、どうやら窓際にあるいくつかの席からは、外の景色を見下ろす事ができるようだ。  幸いこの時間は窓際が空いているから、座るなら今なんだろうけど、お店に魚料理があるのかどうかを確かめるのが先決だな。  レストランのショーケースにはあらゆる食品サンプルが並んでいて、カレーライスやパスタ、お子様ランチといった定番から、ソースカツ丼やステーキ丼などの変化球も取り揃えてある。  さすがは店の規模が大きいだけあって、いろんな料理があるなぁ。食べたいものが多すぎて、思わず目移りしちゃうよ。  これだけメニューが豊富だと、魚料理への期待感も高まってくる。さて、ここでは何を食べさせてくれるのかな。

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