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37.デパートを満喫しよう!(5)
「えーと、ここの魚料理は……うな重とフィッシュフライ定食、あとは海鮮丼ってとこだな」
「カイセンドン? それなぁに?」
「海鮮丼はね、ご飯の上に魚の切り身とか、イクラとかをたくさん乗せたどんぶりの事だよ」
「どこどこー?」
「ちょっと待ってな、今見せてあげるから」
俺は後ろからミオを抱き上げ、ショーケースの上段に置いてある海鮮丼のサンプルへと目線を合わせる。
「ほら。この赤いツブツブをいっぱい盛ってあるのが海鮮丼だよ」
「わぁー、すごくおいしそう! ねぇお兄ちゃん、ボク、これ食べてもいい?」
「もちろんいいよ。じゃあ、お店はここに決まりだね」
「うん!」
割とすんなり話がまとまったところで、抱っこしていたミオを床に下ろし、店内へと歩を進める。
さっそく見晴らしのいい、窓際の席を確保しようと思ったが、レジカウンターに詰めている店員さんに呼び止められてしまった。
「お客様、申し訳ございません。当店は、こちらで先にご注文とお会計を済ませていただく事になっております」
「あ、そうなんですか。じゃあ海鮮丼を一つと、あとは……そうだなぁ。味噌カツ定食で」
「海鮮丼と黒豚ロースの味噌カツ定食ですね、かしこまりました。お飲み物はお決まりですか?」
「えっと。ミオ、何が飲みたい?」
「んーとね。ボク、りんごジュースがいいなー」
「了解。て事で決まりました。りんごジュースと烏龍茶をお願いします」
「ありがとうございます。ご注文は以上で――」
レジにて先に会計を済ませ、食券を受け取った俺たちは、窓際にいくつか並ぶ、四人がけの席を確保する。
うん、思ったとおりだ。ここからなら、街の景色も一望できるだろう。
「デザートも頼むつもりが、意外なシステムだったなぁ」
買い込んだ商品の数々を隣の椅子に置きながら、俺は食後のお楽しみについて考えていなかった事をぼやく。
「ね。座る前に食べたいものを先に決めなきゃいけないとこだって知ってたら、デザートも見てたのにね」
「ここで追加注文をするなら、もう一度お店の外に出てメニューをチェックして、改めてお会計をし直す事になるんだろうけど。ミオ、どうする?」
決断を委ねられたミオは神妙な様子で目を閉じ、首を右に傾けてうーんと唸る。
たぶん、俺が今言った手間と、自分の腹の空き具合、そして俺の懐事情を頭の中で総合しているのだろう。
特にこの子が気にするのは懐事情だ。俺がいくら「お金の心配はいらない」と言っても、まだ子供のミオにとっては、千円するかしないかはもう大金の|範疇《はんちゅう》に含まれるため、どうしても遠慮がちになるのである。
これで先日泊まったリゾートホテルの宿泊料を聞いたら、たぶんミオは飛び上がって驚くだろうな。
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