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37.デパートを満喫しよう!(6)
「そこまでしなくてもいいかなぁ。ボク、海鮮丼だけでお腹いっぱいになっちゃうかもだから」
「確かに出てきた料理の分量によるか。二度手間になるのも何だし。それじゃあ、ご飯を食べてもまだ余裕があったら、他のお店でデザートを頼む事にしよっか」
「そだね。海鮮丼、どんな味がするのか楽しみー」
俺も味噌カツ定食が楽しみ。
いつもなら席に座ってじっくり決めるのだが、お店の注文システムがあれなので、今回は特に目を引かれたものを頼んでみたのだ。
味噌カツなんていつ以来だろう。確か、俺が働く会社の名古屋支社へ研修に行った時、部長のおごりで食べさせてもらったんだ記憶があるんだけど、あれがもう四年前になるのか。
その年に、俺とミオは初めて出逢ったんだよなぁ。そう考えると、この味噌カツにも、何らかの縁がありそうな気がしてくる。
「ねぇお兄ちゃん、これなぁに?」
「……え。どれどれ?」
食券を眺めながら当時の思い出を振り返っていると、うちの子猫ちゃんがまた興味しんしんなものを見つけ、俺にその正体を尋ねてきた。
ミオの好奇心溢れる視線の先にあるものは、コインスロットが付いた丸い置物で、白抜きの英語にて、大きく〝運命〟と書かれている。
「ああ、こりゃ卓上おみくじだね」
「おみくじ?」
「そう。昔ながらの喫茶店とか、レストランにはよく置いてあるんだよ。お店の人が料理を持ってくるまでの暇つぶしに、これを使って遊ぶのさ」
「じゃあ、このAとかBとかいう文字は?」
「それは血液型だよ。こいつは、自分の血液型に応じたおみくじが出てくる仕組みになってるんだ」
ミオは俺の解説を聞きながら、卓上おみくじに書かれているアルファベットを人差し指でなぞっている。
「まぁ、このタイプのおみくじはあくまで暇つぶしが目的だから、神社のそれのような、神様からのありがたいお告げが書いてあるわけではないんだけどね」
「そうなんだ。じゃあ、恋愛の事は書いてないのかな」
「れ、恋愛?」
「この間、お兄ちゃんと一緒に旅行した時に、縁結びの神社に行ったでしょ? あの時に引いたおみくじみたいなの」
「さすがに恋みくじは無いんじゃないか? いや、引いてみないと分からないんだけどさ」
「ふーん……」
今の言葉で興味を失ったのか、ミオは卓上おみくじからそっと手を離し、お冷の入ったグラスに口をつける。
この様子から察するに、お嫁さん願望が強いミオにとっては、恋愛の運勢以外の事柄にはほとんど関心がないみたいだなぁ。
これがネットによくある相性占いだとか相性診断とかなら、俄然 食いつきが良くなるんだろうけど。
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