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38.義弘お兄ちゃんの懸案事項(8)

 どうしよう。お盆休みを利用して、実家に帰省する提案をしたまではナイスアイデアだと思っていたのに、今度は違う問題が発生してしまっているじゃあないか。  実家に帰って、親父とお袋に、ミオの事を「来年結婚するお嫁さんだよ」って紹介したら、一体何を言われるやら分かったもんじゃない。  お前はそんな目的で養育里親になったのか、と問い詰められたら、俺は何て答えればいいんだ?  認めても否定しても、両親かミオのどちらかにショックを与えてしまう、どころの話じゃないな。これは。 「お兄ちゃん?」  ふいに湧き出した悩みで頭を抱えていると、ミオがテーブルに両手をつき、俺の顔を覗き込んできた。 「ん!? な、何だい?」 「どうしたの? さっきから難しそうな顔してるよー」  そりゃ難しい問題でしょうよ。何しろ、実家へ帰った際、自分の両親に、十七歳年下の男の子をどう紹介するのが最適なのか、一向に考えがまとまらないんだから。 「いや、ちょっとその。ミオが俺のお嫁さんになるって話なんだけどさ」 「うんうん」 「親父とお袋には、まだ黙っておこうかと思うんだ」 「どして?」 「どして?」って言われてもなぁ。  ミオにとっては当たり前に抱く疑問なんだろうけど、両親に洗いざらい話す事は(すなわ)ち、自分たちの息子がショタコンだと白状する事になるわけだから……。  でも、ミオを一人のショタっ娘として好きになったのは動かしがたい事実でもあるし、何より、結婚すると約束までしちゃったんだから、いつまでも隠し通す事は出来ないだろう。  問題は、ミオと俺が交わした約束をいつ明かすかであって、それが早すぎても遅すぎても、きっといい結果はもたらさないと思う。  今年の盆休を利用した帰省は、さみしい思いをしてきたミオを実家へ連れて行き、和やかな休暇を過ごさせてあげたくて発案したものだ。だから、両親には、二人の結婚という話はひとまず置いておきたいのである。  よし、考えはまとまった。今度は、かように複雑な事情をいかにうまくオブラートに包み、うちのショタっ娘ちゃんに納得してもらおうか。  ここは俺の話術が問われる場面だなぁ。

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