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38.義弘お兄ちゃんの懸案事項(7)
……で、本題はここからだ。
先ほど俺は、実家とそこで暮らす両親の話をしたわけだが、それがミオの心に暗い影を落とすこと結果になってしまったのである。
二歳で捨て子にされたミオには、両親がいなければ、実家すらも無い。そのさみしさを推し量ろうにも、俺はあまりにも恵まれすぎていた。
だからと言って、このまま何もせず、また心を閉ざさせるような事があってはならない。
俺は四年の時を経て再会した、ミオの里親になりたいと自ら申し出て、必ず幸せにすると誓ったんだ。そんな俺にしか出来ない事が、きっとある。
考えるんだ、柚月義弘 。
かわいい盛りの我が子が抱いてしまった、さみしい気持ちを取り除くためには、何をするのが最適なのか――。
「あ。そうか! お盆があった!」
「え、え? 何?」
さっきまで黙りこくっていた俺が突然口を開いたので、ミオが驚いた様子で聞き返す。
「いや、ごめんごめん。今さっき思い出したんだ。お盆の事をね」
「お盆って、八月のお休みの日?」
「そう。その八月のお盆休みはさ、二人で一緒に実家へ帰ろうよ」
「実家に……でも、いいの? ボクが行って迷惑にならない?」
「迷惑なんかじゃないさ。親父もお袋も、孫のミオが来てくれると知ったら、きっと喜ぶよ」
その言葉でミオの顔は一瞬ほころんだように見えたのだが、ミオはジュースと冷房でよく冷えた指を頬に当て、何やら考え込み出した。
「ねぇお兄ちゃん。孫ってどういう意味?」
「え。孫ってのは、何て言うんだろ。要するに、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの子供の子供、かな」
「それって、ボクがお兄ちゃんの子供だからって事だよね」
「うん」
「でも、ボク、来年にはお兄ちゃんのお嫁さんになるんだよ。そしたら孫じゃないでしょ?」
「う!?」
そうだった。ミオとは親子であると同時に、恋人として付き合ってもいるのだ。
ミオにとって、決して〝ごっこ〟ではない、本物の恋なので、ゆくゆくは俺と結婚したいという願望を今なお強く持っているのだろう。
で、ミオがその願望を捨てられない原因は、ミオの彼氏面をしている俺にも当然ある。
最初は親子としてデートを繰り返してきたつもりだったのに、結婚の約束を経てからというもの、俺もミオの全てに魅せられ、挙げ句、本気で恋をしてしまったのだから。
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