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38.義弘お兄ちゃんの懸案事項(6)

 いくら会話の流れとは言え、余りにも気遣いが足りなかった。今の俺は、ミオが受けた心の傷を癒やしてあげる大事な役目を背負っているというのに。  とにかく。このまま何もなく、なし崩し的に家へ帰るなんて事だけは絶対にしちゃあいけない。  ミオにこれ以上さみしい思いをさせないためにも、ここは俺が、何とか知恵を絞らなければ。 「行こ? お兄ちゃん」 「あ、ああ。なあミオ、ちょっと汗ばんできたから、あっちの屋内で冷たいものでも飲んで、涼んで行こうか」 「うん」  俺はパンダさんからミオを降ろし、手を繋いで、屋根付きのイートインスペースへと連れて行く。  夏真っ盛りの日差しが強い中、大切な話をするのも適当ではないので、二人が落ち着ける、日陰のある場所を探した結果がそこだったのだ。  冷房のよく効いた席を確保した俺たちは、自動販売機にて、ミオがいつも好んで飲んでいるオレンジジュースを買い、一緒に席へ戻る。  ミオはプルタブを開ける前に、缶を包み込むように持って両手を冷やしながら、対面に座る俺の方を向いた。 「お兄ちゃんは飲まないの?」 「俺は、もうちょっと休んでからにするよ」 「そうなんだ。もしかしてお兄ちゃん、ボクのせいで疲れちゃった?」  と、ミオが申し訳無さそうに尋ねてきたので、俺は即座に否定する。 「いやいや、そんな事ないよ。ほら、外はちょっと暑かっただろ? だから、適度に休みを取った方がいいかなって思ってさ」 「あ。それって熱中症の事とか?」 「まぁ一番はその心配だな。ミオも汗かいちゃったんじゃない?」 「だね。ちょっとだけ」  そのシャツのデザインから、ミオは露わになった肩が熱を持っていないか確かめているのだが、俺としては、日焼けの方も気になるんだよなぁ。  日焼け止めをしっかり塗ってはきたものの、やはり長時間、強い日差しにさらされ続けるのはあまりよろしくない。  あれは俺が社会人一年目の夏、新入社員一同で海へキャンプに出かけた時の事だ。  遊ぶことにばかり夢中になって、ろくすっぽ日焼け対策をしなかったせいで、こんがり焼けた俺は、後日、蛇の抜け殻みたいな皮がめくれて、痛い思いをした記憶がある。  うちの子猫ちゃんにはあんな目に遭ってほしくないから、今日のような真夏日にこそ、日焼けには気を配らなくちゃいけないんだよな。

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