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38.義弘お兄ちゃんの懸案事項(11)
ミオは表情を曇らせながら、ゆっくりと席に座り直す。
確かに大変だろうな。ただでさえ、同性婚を認めていないこの国で生まれた俺たちが、世間体がある両親の許しを得ようとしているのだから。
「だから、その話は俺に任せてくれないか? もしかすると、結婚は何年後かに延びるかも知れないけど、認めてくれるまでは絶対に諦めないからさ」
「うん。ごめんねお兄ちゃん。ボク、無茶言ってたよね」
「いいんだよ。ミオの俺を好きでいてくれる気持ち、親父たちにもきっと伝わる日が来るから。それまでは、親子って話にしておこう」
「分かったよー。でも、お家にいる時は、ボクはお兄ちゃんの彼女でいいんだよね?」
「ん、もちろんさ。何たって付き合ってるしな」
俺がハッキリ答えると、ミオは一転して晴れやかな笑みを浮かべ、全身を使って喜びを表現した。
三十歳近い男が、まだ十歳ちょいのショタっ娘を彼女にするって、ものすごい事をしているんだけれど、不思議と罪悪感は無い。
何しろ、まだキスもしていないくらい、ウブな関係だからな。
ここから今後どう発展していくのかは俺たち次第だけど、相思相愛である限り、悪い方向へは進まないだろう。
とにかく、これで何とか話はまとまった。
今年のお盆休みはミオと一緒に田舎へ帰省して、実家でのんびり過ごしてもらおう。
厳密に言うと、親父たちの孫に当たるミオにとって、実家と言えば正しくは俺と暮らすマンションになるわけだが、将来的な目線で考えれば、あながち間違いでもない。
なぜなら、この子は俺のお嫁さんになるのだから。
ただ、実家はなにぶんにも相当のどやかな場所にあるもんだから、退屈だけはさせないような工夫が必要だな。
他の用事を済ませて家に戻ったら、その辺の計画も練ってみるか。
俺と再会するまでさみしい思いをしていたミオには、その埋め合わせという意味ではないけれど、できる範囲で、楽しい思い出をたくさん作らせてあげたい。
その手伝いは、この子の里親であり、彼氏でもある俺だけにしかできない事なんだ。
とは言え、俺一人の力だけでは解決しないケースも出てくるだろうから、そんな時は、両親や佐藤たちに相談させてもらおうと思う。
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