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39.初めてのペットショップ(1)
「ミオ。次は何して遊びたい?」
「んーとね。ボク、あっちの、人がいっぱいいるところが気になってるんだー」
オレンジジュースを飲み終えたミオが指差した先では、ここと同じくエアコンの効いた屋内で、多くの家族連れが、無数に並ぶケージを眺めていた。
「あっちかい? あそこはペットショップだね」
「ペットショップ?」
「そう。あの透明な飼育箱の中に、小さいワンちゃんや猫ちゃんとかの動物がたくさんいるんだよ」
「それって、ウサちゃんパークみたいなの?」
動物と聞いて、ミオは先月訪れた、ウサギ好きのための楽園、ウサちゃんパークを連想したようだ。
「ちょっと違うかな。ペットショップは、気に入った動物をお金で買うことができるからね」
「お金で買っていいんだ。でも、ワンちゃんとか猫ちゃんって、いくらくらいするのかなぁ」
「俺も相場には詳しくないんだけど、血統書付きの子猫は、確か三十万円を超えてたような記憶があるな」
「えー! さんじゅうまんえん!?」
自分が予想していたよりも大幅に異なった……というよりも、あまりにも高すぎた、というのが正確なところだろう。
子猫ちゃん一匹を引き取るために必要な額を聞いたミオは、飛び上がりそうな勢いで驚いた。
「まぁ普通はびっくりするよな。ただ、ペットを売るのは、大切な命をお客さんに預けるという事でもあるわけでさ」
「うん」
「もちろんお店の儲けも大事だけど、それ以上に、お客さんの決意を知るためという意味でも、あんまり安値でやり取りはできないんだよ」
「そうなんだ。動物を飼うのって、すごく大変なんだね」
ジュースの缶を両手で包んで転がしながら、ミオは複雑そうな顔をする。
「で、あの人たちの中には、うちみたいなマンションで動物を飼えなくて、見るだけならって人もいるんじゃないかな。あとはペット用品を買いに来たとか」
「ペット用品? それってご飯とか?」
「そうだね。ご飯もあるし、おやつだって置いてあると思うよ。今は猫ちゃんが夢中になるのが特に人気だからな」
「ふーん。ねぇお兄ちゃん、ボクもワンちゃんたち見に行ってもいい?」
「もちろんいいよ。行っておいで」
ミオは俺の許しを得たから、てっきり喜んでくれると思ったのだが、意外な事に、ちょっと困ったような様子を見せた。
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