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39.初めてのペットショップ(2)

「えと。ボク、お兄ちゃんにも一緒に来て欲しいな」 「え。俺も?」 「うん。お兄ちゃんと二人で見たいの。……ダメ?」 「ダ、ダメなんかじゃないよ。それじゃあ一緒に行こう。な」 「ありがとう、お兄ちゃん!」  ペットを見られる事以上に、俺と一緒に行ける事がよほど嬉しかったのか、ミオは席を立って抱きついてきた。  よく考えれば当たり前だよな。恋人同士という関係上、俺はいいから一人で行っておいでよって言われたら、きっと全世界の恋する乙女はガッカリするだろうから。  限りなく女の子に近いショタっ娘ちゃんのミオにとっても、それは同じ事。世界に一人しかいない親であり、同時に彼氏でもある俺と一緒に見に行きたいと思うのは、ごく自然な願望なんだ。  ミオがお願いしてくれなければ、そのまま気が付かないところだった。危ない危ない。  こういう鈍感で女心の分からない一面があるからこそ、俺は今日までモテてこなかったんだろうな。  一体親父は、どうやってお袋の心を射止めたんだろう。同じ血を受け継いでいるというのに、ここまで差が出るとは。  もしもミオがいてくれなかったら、俺は今ごろ独りで、非モテ生活を継続していたに違いない。そう考えるとゾッとするなぁ。 「そう言えばお兄ちゃん、ジュースは飲まないの?」 「ん? ああ、何だか思ったほど喉が渇いてないみたいでさ。だから一本買うほどでもないかなって」 「じゃあ、ボクのをあげるー」  ミオはそう言うと、自分が飲んでいたオレンジジュース缶の下半分に残った水滴を拭い、笑顔で差し出した。  先ほど、全部飲み終えたとばかり思っていたミオのジュースは、まだ残りがあったのだ。 「いいのかい? ミオ」 「うん。ボクはもうたくさん飲んじゃったから、お兄ちゃん飲んでー」 「ありがとう。それじゃあいただくよ」  ミオからよく冷えた缶を受け取った俺は、飲み口に唇を当て、少しずつオレンジジュースを流し込んでいく。  うん、オレンジの果汁が濃縮されていてうまい。  ところで。俺は今しがた、ミオが飲んでいたジュースにそのままに口をつけたから、二人はをしたという事になる。  俺たちは付き合っているが、まだ口と口の接吻どころか、ほっぺにチューすらも交わしていない。そこへ来ての間接キスは、果たして、この子に何らかの影響を与えたりするのだろうか。

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