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39.初めてのペットショップ(3)
うまそうにジュースを飲む俺の顔を、ニコニコしながら見つめているところから察するに、今のところ、間接的に口づけをしたという風には捉えていないようだ。
でも、この無邪気さも時間の問題かなぁ。
うちのショタっ娘ちゃんはうちに迎え入れて以来、テレビを見るようになったし、クラスメートの女の子たちからも〝恋バナ〟を聞かされるらしいから。
まだ十歳の柔らかい頭だと、間接キスが何であるかなんて、あっという間に覚えちゃうんだろうな。
さ、ジュースも飲み終わった事だし、今度はペットショップを覗いてみるとしますか。
ワンちゃん猫ちゃんがあまりにもかわいすぎて、「ボクも飼いたーい」って言い出さないか心配だけど、お利口さんなミオなら、きっと聞き分けてくれるだろう。
「ごちそうさま。それじゃあ行こっか」
「うん!」
近くのゴミ箱へジュースの空き缶を捨てると、ミオは、それを見計らったように俺の手を引き、ペットショップへと連れて行く。
そうして訪れた店内では、ほどよく冷房が効いており、蒸すような暑さだった屋外との気温差で、鼻が少しむず痒くなった。
一方、ずらりと立ち並ぶケージを見回したミオは、横になったままこっちを見ている一匹の子犬が目に止まり、早速その愛らしさに釘付けになったようである。
「お兄ちゃんお兄ちゃん! ちっちゃなワンちゃんがこっち見てるよ。かわいーい」
「ミオ、見るのは良いけど、あんまり騒いじゃダメだぞ。ワンちゃんも猫ちゃんもお休み中なんだからね」
「はーい」
うん。やっぱりうちのミオは、世界で一番聞き分けのいい子だよ。
「このワンちゃん、ずっとプルプルしてるけど、寒いのかな?」
「んー、体温調節のために震える、という説はあるな。ただ、興奮したり、緊張してたりする時もプルプルするらしいよ」
「そうなんだ。ワンちゃんワンちゃん、ボクたちは怖くないよー」
ミオはかがみ込んで子犬と視線を合わせ、笑顔で手を振り始めた。
その言葉が通じているかどうかは分からないけど、たぶん、ミオの心優しさは伝わったのだろう。
子犬はリラックスした様子でミオを見つめ、ふかふかの小さな尻尾をゆっくりと揺らしている。
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