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40.夏祭りを控えて(9)

「どうかな。似合ってる?」 「う、うん、とてもよく似合ってるよ。かわいいショーツだね。シャツもいい感じだ」 「でしょ? ボク、これをひと目見ただけですごく欲しくなっちゃって、園長さんにお願いして買ってもらったんだよー」 「ああ、分かるよ。何と言うか、その薄紫色のリボンがいいアクセントになってるよな」  などと話を合わせてはいるが、今の俺はすっかり上気してしまっているようで、ほっぺたや耳たぶがやたら熱い。  たぶん遠くから見ても分かるくらい、俺の顔は真っ赤っかになっているのだろう。 「でね、このシャツだけど――」  と言うやいなや、ミオは着替えたばかりのシャツの肩をはだけさせようとする。  こんな事を思うのは今更ではあるが、何という無警戒ぶりだろうか。  いかにミオが俺の事を慕っているからといって、さすがにこれ以上露出を増やされたら、こちらが理性を失いかねない。  まかり間違って、まだ十歳のショタっ娘に手を出そうものなら、俺の人生が終わってしまうのは火を見るよりも明らかだ。  そんな事をするつもりは微塵(みじん)もないが、展開によっては、何が起こるか分からないのも事実。ならば、ここは全力でミオの脱衣を阻止するしかない。 「あ、ミオ!」 「ん? なぁに?」 「そろそろ出かける時間だよ。早く浴衣に着替えないと」 「え、もうそんなに経っちゃった?」 「そうだよ。ほら」  俺は部屋の壁掛け時計を指差し、ミオに現在時刻を知らせる。  ミオによる下着姿のお披露目を無理やり終わらせるつもりでそうしたのだが、今は午後六時四十五分を超えたあたりなので、ほんとにそろそろ出かけないと、遊ぶ時間が短くなってしまいかねない。 「急がなきゃ、せっかくのお祭りが終わっちゃうかもだぞ」 「えー! そんなのやだぁ。じゃ、急いでお着替えするね」 「うん。俺も着付けを手伝うから」  ふう、やれやれ。何とか事無きを得たか。  ミオがあそこまで俺に心を許してくれているのは嬉しいけれど、あくまで今日はお祭りへ行く日なのだから、お色気ショーはほどほどで終わらせないとな。  ――かように紆余曲折はあったものの、下着選びを無事終えた俺たちは各々の浴衣に着替え、山中の夜道を照らすための懐中電灯を持ち、しっかり施錠したのを確認してから自宅のマンションを出た。

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