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45.一家団欒(10)

 ミオはまぁ分かるとして、親父は一体どうしたんだ? まるで、今をときめくアイドルに、道端でばったり出会ったファンみたいな反応じゃないか。 「や……やあ。ただいまミオくん。よく来てくれたね。いらっしゃい」 「ん? 親父、様子が変だぞ。ひょっとして、実物のミオに会って緊張してんの?」 「うっ。いやこれは、そのぅ」  自分の心理状態を言い当てられたからか、親父は返す言葉に詰まってしまった。  ほんとは実物って言葉は適切じゃないんだろうが、「本物」と言ってしまうと、じゃあ偽物は誰なんだよって話になるし、言葉選びが難しい。 「お袋から話聞いたよ。夜な夜な、アルバムに挟んだミオの写真を眺めては、にこにこしてるらしいじゃん」 「いい、いいだろ別に。お前が母ちゃんに送ってくれた、ミオくんの写真を眺めるのが最近の楽しみなんだよ」 「ボクの写真?」  親父は顔を赤らめながら、首を傾げて聞き返すミオの方を向き、こくりと頷く。 「実はね。義弘が、盆休みにミオくんを連れて帰って来ると聞いて、お父さ、いや、お祖父ちゃんは、その日が来るのを一日千秋の思いで待ってたんだ」 「イジチズ……んー?」 「はは、親父。いきなり四字熟語を使って答えても、余計に小難しくなるだろ。ミオはまだ十歳なんだからさ」 「そうか。いや、すまなかったねミオくん。要するに、今日が待ち遠しかったって事なんだ。来てくれて嬉しいよ」 「そんな……」  ここまで歓迎されることを想定していなかったのか、ミオは嬉し恥ずかしといった様子だ。さっきから、俺が着ている服の裾をギュッと掴んで引っ張り、その場でモジモジしている。  おそらくミオなりに照れ隠しをしているつもりなのだろうが、このままでは俺の服が伸びてしまいそうだ。 「まぁまぁ。積もる話はここじゃなくて、飯の時にでもしようよ。風呂も沸いてるし」 「ん。じゃあ先に風呂を、と思ったけど、飯は皆まだなんだな。シャワーで軽く流してくるか」 「ええ? 親父、さすがにそれは――」 「お父さん、そこまで急がなくていいんじゃない? わたしたち、三時のおやつにクッキーを食べてるから、まだお腹の余裕はあるわよ」  俺たちの話が長くなった事で、玄関まで様子を見に来たお袋が、いいタイミングで意見してくれた。  さっきから服の裾を掴んで離さないミオも、お袋と同じ意見らしく、首を縦に振る。

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