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45.一家団欒(12)

 ミオが写真を撮られる事に全く抵抗がないのは、カメラマンが俺だからという、実にシンプルな理由だと思う。  これは某グラビアアイドルが、とある雑誌で語っていた事なのだが、水着姿や際どい衣装で撮影に臨む際、「カメラマンをだと思い込むこと」で、抵抗感を無くし、自然体でポーズを決めたりしていたらしい。  この考え方を俺たちに当てはめると、ミオにとっての彼氏は俺なので、その彼氏にならば、どのシチュエーションで写真を撮られてもかまわないのだろう。  そこまで俺の事を好きでいてくれるのは嬉しいんだけど、その彼氏である立場を悪用して、あられもない姿をフィルムに収めるような真似だけはしてはならない。  俺たちにとっての写真は、楽しい思い出を残すためなのはもちろん、かわいいミオの成長記録を残すのが目的でもあるのだから。 「――さてと。お祖父ちゃんがお風呂から上がるまで、わたしたちはテレビでも見て過ごしましょうか」 「そうだな。ミオ、何か見たい番組ある?」 「んーとね。ボク、アニメか魚釣りが見たーい」  なんてことを話しながら居間に戻った俺たちは、各々が椅子やソファーにもたれかかり、親父の風呂上がりまで、テレビを見て暇つぶしをすることにした。 「ミオちゃん、魚釣りが好きなの?」 「そだよ。お兄ちゃんに魚釣りに連れて行ってもらったり、イカ釣りをした事もあるんだー」 「あら、そうだったの。大好物のお魚を食べるだけじゃなくて、自分で調達するあたりが、本物の猫ちゃんみたいねぇ」 「はは。猫は釣り糸垂らさないから何だけど、ミオはほんとに魚釣りが上手だよ。釣り上げた後の針外しも手慣れたもんだし、きっと天賦(てんぷ)の才を持って生まれたんだろうな」 「んんん?」  笑顔で俺の話を聞いていたミオは、視線を斜め上に動かし、首をひねって考え込み始めた。  たぶんこの子は、さっき出てきた「天賦の才」の意味が分からないのだろう。 「ごめん、ちょっと難しい言葉だったかな。とにかくミオは、魚釣りの天才だってことさ」 「そうかなぁ。でも、ホテルへお泊り行った時、おっきなアイゴを釣り上げたお兄ちゃんの方がかっこよかったよー」 「え? 義弘、アイゴ釣ったの? 刺されなかったでしょうね」 「刺されるわけないじゃん。子供のころから親父と海釣りに行って、俺が釣り上げたたびに、そのつど口酸っぱく注意されてきてんだから」

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