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46.花火で遊ぼう!(11)
*
「スイカを持ってきたわよー」
ミオと俺がいくつかの種類の花火を遊び終えたころ、お袋が、一玉を丸ごと切り分けたスイカと塩の詰まった小瓶、そして水分補給のための麦茶を運んで来た。
「お、来たか。義弘、ミオくん。母ちゃんがスイカを持って来てくれたぞー」
「ああ、聞こえたよ。んじゃミオ、ちょっとひと休みして、デザートのスイカを食べに行こっか」
「うん」
ミオは、たった今燃え尽きた花火をバケツの水に漬け込むと、軽く手をはたきながら立ち上がり、いつものように俺の腕を抱いた。
「ウエットティッシュもあるから、食べる前に、ちゃんと手を綺麗にするのよ」
スイカを切って運ぶだけでも相当なエネルギーを要しただろうに、麦茶やウエットティッシュまで用意して来たんだから、お袋は気配りが上手だよなあ。
「あれ? このスイカ、中身が黄色いよ。珍しいねー」
「ん。ミオ、その反応だと、ひょっとすると黄色いスイカを見るのは初めてなのかな?」
「うん、初めて! ボクが施設にいた時は、いつも真っ赤なスイカを食べさせてもらってたんだよ」
「そうか。黄色いスイカは、文字通りひと味違うから、また新しい発見があると思うよ」
俺たちは、お袋が用意したウエットティッシュで手の汚れを落とし、大皿に盛られたスイカを一切れずつ手に取る。
「ねぇお祖母ちゃん。ひとつ聞いてもいい?」
「いいわよ。何かしら?」
「どうしてスイカの横に塩が置いてあるの?」
ミオはスイカを食べる前に、甘味とは正反対の立場である、塩の詰まった小瓶の存在と、その意味が気になったようだ。
「このお塩はね、スイカに振りかけると、スイカの甘さが増すのよ」
「えぇ? ほんとに? ボク、スイカを塩味にして食べるのかなって思ってたよー」
「ミオちゃんがそう思うのも無理はないわね。あえて難しい言葉を使うけど、食べ物には対比効果というものがあって、甘いものにお塩を振ることで、甘味をより強く感じるようになるの」
対比効果を知らないミオは、頭の中で漢字に変換しようと試みはしたものの、その難しそうな顔を見るに、あまり正確な当て字が思い浮かばなかったらしい。
「タイヒコーカって言葉はよく分かんないけど、とにかく塩をかければスイカは甘くなるんだね。これがお砂糖だったらどうなるのかな……」
「どうかしらね。わたしは試した事がないから味の想像がつかないけれど、少なくとも、お砂糖でスイカが塩辛くなったりはしないはずよ」
「そうなんだ。スイカって不思議な食べ物だねー」
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