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46.花火で遊ぼう!(18)

「ごちそうさまでした! 黄色いスイカ、すっごくおいしかったよー」 「あらミオちゃん、もうお腹いっぱい?」  大きなスイカの一切れを食べ切り、お腹をさすり始めたミオに、すかさずお袋が声をかける。 「うん。今日はおいしいものいっぱい食べちゃったから。お祖母ちゃん、ありがとね」 「いいのよ、お礼なんて。また明日も、皆でおいしいものをたくさん食べましょうね」  血縁関係がなくても、養子縁組をしていなくても、孫は孫。そんなかわいい初孫の心遣いに胸を打たれたお袋は、ミオの頭を優しく撫で、背中の方からそっと抱き締めた。  実を言うと、俺もスイカは一切れで満足しちゃったんだよな。  ミオと一緒に花火を遊んで、多少の腹ごなしにはなったかと思ったけど、いかんせん豪勢な晩ご飯を平らげた後なもんで、これ以上はさすがに厳しい。 「俺も、みやげ話になる食べ方できたから、今日のところはこのくらいにしておくよ」 「義弘もなの? あんたちょっと、食が細くなったんじゃない? ひょっとして、体のどこかが悪いんじゃないでしょうね」 「いやいやお袋、そりゃ勘繰りすぎだって。俺ももう三十路が見えてきたんだし、運動不足気味だから、学生の時みたいな大飯食らいを続けてたら、みるみる太っちゃうよ」  お袋は昔から、年がら年中どこかしらの放送局でやっている、健康や病気をテーマとしたテレビ番組にチャンネルを合わせては、逐一メモを取っていた。  そのメモを健康維持に役立てている自負があるだけに、体調の変化には人一倍気がつくのだろうが、今回のスイカに関しては、単純に晩ご飯の食い過ぎが原因である。  こんな事なら、調子に乗って、煮麺を大盛りでお代わりするんじゃなかったぜ。 「母ちゃん、スイカの残りは明日に取っておけないか? 冷蔵庫は無理でも、さすがに野菜室には入るだろ」 「そうね。冷やしすぎると甘味が落ちると言うし、ラップをかけて野菜室に入れて、明日のデザートにしましょ」  親父の提案を採用したお袋は、立ち上がるやいなや、足早に台所へと向かい、程なくして、透明なラップが巻かれた箱を持って戻ってきた。 「それじゃ、スイカのお皿はラップで覆ったまま野菜室に置いておくから、皆、好きな時に取って食べてね」 「はーい。お兄ちゃん、また明日も一緒に、あまーいスイカを食べられるね!」 「はは、そうだな。おやつの時間なら、昼間に保存したクッキーも出番を待ちわびているし、当分は甘いものには困らなさそうだね」  続けて「糖分だけに」……ってダジャレを付け加えようかと思ったけど、この蒸し暑い夜の空気を急激に冷やしてしまいそうなので、あえて口にするのはやめた。

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