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46.花火で遊ぼう!(17)

 そういや俺が勤める会社の上司も、同様に、トマトにまつわる苦々しい過去を回顧していたな。子供時代は、昔のトマトの……特に中央にある、ジェル状な種の部分が苦手で、それが給食で一個丸ごと出された時は、ほとほと困ったらしい。 「味がいいわけじゃないのにトマトを食べてたの?」  と、ミオは特に遠回しや、オブラートに包んだ言葉を使わず、ストレートに疑問をぶつけてくる。  そりゃあ、現代っ子のミオにとっては理解しがたい話だよな。お袋は「味がいいとは言えない」なんてぼかした表現をしているけど、言葉のオブラートを取り除くと、当時のトマトは相当うまくなかったって事になるんだから。  そんな味の良くないトマトを、塩をかけてまで食べなきゃいけなかったのか? という疑問をミオが抱くのも、無理からぬ話ではある。 「ミオくんが不思議がるのも仕方ないな。おれたちも、今じゃどうして? って思うよ。おれたちが子供の頃に栽培されていたトマトは、酸っぱさに加えて青臭さも強くてね、そりゃあ食べ切るのに難儀(なんぎ)したもんだ」  難儀の意味が分からないのか、ミオは少し首をひねって考え込む様子を見せたが、昔のトマトを食べるのに苦労した事だけは、何となく理解したようだ。 「今のトマトはかけ合わせた品種改良とか、育て方を工夫して出来上がった、糖度の高いトマトが並ぶようになったわね。分類としては緑黄色野菜の仲間だけど、果物みたいに甘いから、品種によっては〝フルーツトマト〟なんて呼ばれる事もあるのよ」 「あ! ここでもスイカとかバナナの時みたいに、品種改良が出てくるんだねー」 「あら、確かにミオちゃんの言うとおりね。まぁ、せっかく口に運んで食べるのなら、おいしくて、なおかつ栄養価の高いものが良いと思ったんでしょう」 「ふーん。品種改良ってすごいんだね。スイカとかバナナでしょ、それからトマトも、魔法か何かをかけられたみたいに変わっちゃうんだもん」 「そうねぇ。ひょっとすると、品種改良は私達が生きる、現代の魔法なのかも知れないわね」  どっちかと言うと、錬金術の方が近い気もするのだが、毎週、魔法少女のアニメを欠かさず見ているミオとしては、やっぱり魔法を身近に感じるのだろう。  ――それにしても。  最近のトマトは甘くなった、という話はよく耳にしていたが、まさか、フルーツトマトという呼称や売り文句が広まっていたとはな。  じゃあ普通にフルーツを食べればいいんじゃないの? なんて聞くのは野暮なのだろうか。  もっとも、「トマトが赤くなると、医者が青くなる」という言葉もあるし、純粋な果物とフルーツトマトじゃあ、摂取できる栄養分が大きく異なるのだろう。

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