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1.ミオとの出会い(1)

「おはよう、義弘(よしひろ)お兄ちゃん!」  その元気な声で、今日も俺は深い眠りから目が覚めた。  俺は柚月義弘(ゆづきよしひろ)、しがない営業職の会社員だ。  で、そんなしがない俺を起こしてくれた声の主は、一週間前からうちで暮らすことになった、元・天涯孤独な男の子である。  男の子の名前は唐島未央(からしまみおう)。俺は愛情を込めてこの子を「ミオ」と呼ぶことにしている。  ミオの髪の毛は爽やかなブルーのショートヘアで、今年で十歳になったばかりだが、まだ体は小さい。  男の子だから胸こそはもちろん発育していないものの、かわいらしい顔立ちや、くびれのある腰つき、などの身体的特徴から、俺が初めてミオに出会った時には女の子だと勘違いしてしまった。  なぜミオが天涯孤独だったのかというと、ミオは生まれてから二年後には捨て子として警察に届けられ、それからずっと、身寄りのない子を引き取る児童養護施設で育てられていたらしいのだ。  捨て子なので当然かも知れないが、ミオがこの歳になるまで、ミオの事を引き取りに来る両親はおろか、親類やきょうだいすらいなかった。  つまりこの子は、ずっと一人で、親の愛情も知らず、他の身寄りのない子らと共に育ってきたのである。  ある時、俺はその施設に営業の仕事で立ち寄ったのだが、ミオは俺の姿を見るなり、こちらの方へ駆け寄って来て、いきなり抱きついてきたのだ。  突然ワイシャツに顔をうずめられて、一瞬何が何だか分からなかったが、これがこの子をうちへ迎え入れるきっかけとなる〝出会い〟になった事は間違いない。 「あらあら珍しい、未央ちゃんが人に懐くなんて。よっぽど貴方のことが気に入ったのかしらねぇ」  とは、俺を出迎えに来た施設の園長さんの言葉だった。まるでミオの事を、野良の子猫として扱っているかのようなセリフである。  最初は(ついに俺にもモテ期が来たか!)と心の中で喜んでいたのだが、ミオが男の子だと聞かされてびっくりした。  仕事の話がひと段落した後に詳しい事情を聞くと、ミオは数年前、自分が捨て子だという事を知らされてから、深く心を閉ざしてしまったらしい。  それ以来、ミオは大人に不信感を抱き、園長さん以外の職員の誰とも積極的に口をきこうとはせず、学校に通う事も拒否したのだという。  そんな子が、どうしてひょっこり現れた俺なんかの事を気に入ったのか、まったく見当がつかなかった。  ただ、園長さんの話を聞いている間も、ミオはずっと俺の腕に抱きついたまま離れようとせず、めいっぱい甘えてくるものだから、こっちもつい情が湧いてしまったのだ。  こんなに俺のことを気に入ってくれたミオを置いて帰るのも何だかかわいそうだし、俺は俺でもう三十路近いのに全く浮いた話のひとつもない独身生活だし、この際子供ができたと思って、ミオをうちの家族の一員にしようと決心し、翌日には里親の申し出をしたのだった。  あらかじめ断っておくが、決して俺にショタコンの気はない……はずだ。

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