560 / 821

48.ショタっ娘とスローライフ(18)

「あはは。ミオにはちょっと聞き慣れない言葉が並んじゃったかな。詳しく説明すると、今まさに、駐車場に空きがあるのかどうかを、道路の脇に立っているデジタル式の掲示板が教えてくれるんだよ」 「デジタル式って、時計みたいな?」 「まぁそうだね。うちの目覚まし時計は、毎秒ごとに数字を変えているから仲間みたいなものだけど、電子掲示板の場合は、遠いところからでも、文字や数字を自由に操作できる代物……と考えればいいんじゃないかな」 「そうなんだ! デンコーケージバンってハイテクなんだねー」  電光掲示板に馴染みがないミオにとって、初めて見聞きしたその存在は、何もかもが新鮮であるがゆえに、さぞかし最先端のテクノロジーで動いている――と思っているらしい。  確かにハイテクではあるよな。少なくとも、手書きの張り紙を画鋲やテープで留めている、木造のそれよりは。 「ところでミオ。昨日、太ももにできてた赤ニキビなんだけど、もう大丈夫なのかい?」 「うん。朝ご飯を食べたあと、お祖母ちゃんに見てもらったんだけど、赤みがほとんど消えてるって言ってたよー」  ミオはそう答えると、腰を曲げながら、両手で左の太ももを持ち上げ、かつて赤みがあった裏側の部分を見せようとしたが、なかなか難しい作業のようだ。  そりゃ狭い座席でシートベルトを巻いた状態で、太ももの後ろ側を見せるなんて、たやすい事じゃあないよな。 「いいよいいよ、ミオ。治ってきている部分は後で見せてもらうから。とにかく、お袋が買い置きしておいた、あの塗り薬が効いたみたいだし、ひと安心、ひと安心」 「お兄ちゃんは、左手は平気なの? 昨日すっごく腫れてたでしょ」  ミオはそう言って首を上下させながら、地下駐車場へ進入するために、反時計回りに切ったハンドルを握っている、俺の左手の甲を目で追っかけ始めた。 「だ、大丈夫だよ、そんなにじっくりと見つめなくても。腫れも引いたし、痒みも治まったからね」 「ほんと? よかったぁー」  ミオがここまで心配するのも無理はない。何しろ、ただのヤブ蚊に刺された痕にしては、近年まれに見るような腫れ上がり方だったからね。  お袋が即座に薬を塗ってくれたおかげで、痒みに悩まされることもなく済んだことを考えると、もしもの時のために、応急処置ができる塗り薬やら何やらの常備薬を揃えておくのは、やっぱり大切な事なんだなぁ。  この帰省が終わったら、俺たちも二人でドラッグストアに寄って、救急箱を充実させに行くとするか。

ともだちにシェアしよう!