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51.帰路にて(10)
過去に犯した間違いや失敗の数々は、大切な教訓になり、人生の教本として記憶されていく。だからこそ大人たちは、同じ過ちを繰り返さない。もちろん例外はあるが。
他方の子供たちは、しばしば「子供は残酷だ」と言われる。その一因は、先程ミオが問い確かめる時に用いた直言にもあった。さっきのはかなりマイルドな方だけど。
ある日突然、大切に育ててきた我が子が、トゲのある、または品のない言葉を使い始めた場合。たいていの親御さんは色を失うと思う。
そして、「そんな汚い言葉、一体どこで覚えてきたの!」と詰め寄り、厳しく咎 めてでも止めさせるだろう。少なくとも、柚月 家ではそうだったから。
ここで留意しなくてはいけないのが、子供たちがよそで覚えた言葉の数々は、自身では上品か下品かの区別がつかないまま使ってしまっている……ということ。
例を挙げるなら、「学校の友だちが使っていたから」とか、「テレビの字幕に書いてた言葉だから」みたいな理由で、他人や有名人による良し悪しを判断材料にしてしまった場合など。
ただ、そこに悪意があろうと無かろうと、一度でも使ってしまえば、言われた方には傷がつく。それゆえに大人たちは、子供は残酷だというイメージを植え付けてしまうのである。
だが、うちのミオは年相応に、自分ができる範囲で調べ物をしたり、時には俺に尋ねたりして、学ぶ姿勢を見せている。だからこそ、頭ごなしで叱り飛ばすようなマネだけはしちゃいけないんだ。
「ところで。レニィ君たちは今、どうやって暮らしてるんだろうな?」
「ん? どゆこと?」
「ほら、あの子たちの両親は考古学者って言ってただろ?」
「うん。イセキでハックツしたり、研究したりでいろんなところに行ってたんだよね」
「遺跡」と「発掘」が何なのかを知らないミオは、該当する単語をロボットのように棒読みするので、しばしばイントネーションが気になる。
「俺たちを見送りに来てくれた時、あの兄弟のお父さんたちは、もっと我が子に寄り添うよう改心してたじゃん?」
「そだね。あの時は『子供が一番の宝物』だって――」
「言ってたからさ。あの時を境目に、少しは環境を変えられたのかなぁって」
「それって、皆で一緒に暮らす時間が増えた、みたいな話?」
「まぁ平たく言うとそうだな。考古学者がどこまで時間や日数を切り詰められるのかを、俺たちは知らないからさ……」
「あ……そうだね」
それっきり話すと、俺たちはしばらく黙り込んでしまった。どっちにも答えられない、予想もつかない事を妄想したところで、正解にはたどり着けないからだ。
切なそうに下を向くミオの、爽やかなブルーのショートヘア。ツヤのある髪の毛が、カーエアコンからそよぐ微風で揺れるたびに、ヘアシャンプーの甘い香りが漂ってくる。
助手席に彼女を乗せるって、きっとこういう感じなんだろうな。かくいうミオもショタっ娘であるとはいえ、れっきとした彼女には違いないんだけれども。
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