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58.いざ大阪(6)

「あ、あははは。柄にもなかったですか?」 「いえいえ、そうじゃないんです。柚月さん、ウサギさんがお好きなんだぁ! と思って……」 「はぇ!?」  俺は笑いすぎて涙を拭う京堂さんをよそに、暗転したスマートフォンを操作すると、そこには俺の寝顔を収めた写真が映っていた。しかも、隣ではウサちゃんのぬいぐるみが添い寝している。  ぬおおお、何てものを見られてしまったんだ! たぶん今朝、俺よりも早起きしたミオが撮った写真に、いつもの好き好きメッセージを添えて送ってきたんだろう。  その通知アイコンを、偶然タップした結果がこれなわけだ。ミオからの愛が伝わって嬉しい反面、顔から火が出るほど恥ずかしいのもまた事実で、とても平静を保ってはいられなかった。  何しろ、初対面な美人秘書に、油断しきってだらしのない寝顔を晒しちまったんだから。 「柚月さんがおやすみ中のお写真、かわいいですね」 「いやいや。恥ずかしいところをお見せしてしまって、言葉もありません。まさか今日、こんな写真を撮られてしまっていたとは……」  京堂さんはニンマリとしながら、いかにも興味深げに、俺の手元を覗き込んできた。これをダシに、契約面で優位に立とうとか、そういう意図こそは無いようだけど。 「男の人の寝顔ってかわいいですよね。女の子って、こういう寝顔と普段とのギャップにときめいちゃうんですよ?」  イタズラっぽい笑みで見上げてきた、京堂さんの唇に引かれたルージュが紅く艶っぽくて、今にもクラクラしそうだ。 「だ、そうですね。自慢というわけではないんだけど、同じ事を言ってくれる子の撮った写真がこれなので」 「あ……そうでしたわね。自撮りじゃないって事は、このお写真は、もしかして彼女さんが?」  との問いに、俺は大きく頷いて答えた。その彼女こそが、ショタっ娘ちゃんのミオである事を包み隠さず、全てを京堂さんに打ち明けたのだ。どうして歯止めが効かなかったのかは分からないが、「この女性(ひと)ならきっと受け止めてくれる!」みたいな、そんな直感に揺り動かされたんだと思う。 「すみません、出し抜けにこんな話をしてしまって。でも、これが僕の偽らざる本心ですから、いかような処分であっても、甘んじて受ける覚悟はできています」 「ふふ。私はミオさんが羨ましいですわ。四年も待ち()がれて、ようやく一緒になれたんですもの。そこまで慕ってくれていたからこそ、柚月さんも、ミオさんの養育里親になる決意を固められたんでしょう?」 「……はい。さすがに、結婚の約束をするまで愛が深まるとは、全く予想だにしてなかったんですけどね」 「年齢の差が差ですもの。驚かれるのも無理はありませんわ」  意外な事に、ミオとの同性愛を聞いても、京堂さんは何ら動揺する素振りを見せなかった。さすがに「このショタコン!」の一言くらいはあるかと覚悟はしていたんだが。

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