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63.初めて尽くしのお泊まりデート(7)

 高級木材をふんだん用いた一等洋室コテージの探検も終わり、リビングで一息ついていると、ミオが何かの箱を抱えてやって来た。 「ねぇねぇお兄ちゃん。パズルやって遊ぼ!」 「パズル? 何の?」 「えへへ。海の中で泳ぐ、お魚さんたちのジグソーパズルだよー」  ウキウキした様子のミオが突き出してみせたパズルの箱を見るに、ピースの数はおよそ三百を超えるらしく、それらを全て繋げ合わせると、箱絵の見本どおりに完成できるのだそうだ。まぁ当然か。  完成図の絵柄や遊ぶ人の熟練度によるが、一般的なジグソーパズルは、だいたい百ピースで一時間くらいかかると聞いた事がある。  つまり、これを今から遊び始め、ほぼ詰まる事なく完成させた頃には、ちょうど晩ご飯の時間になっているってわけだ。なるほど、インドアにはおあつらえ向きじゃないか。 「いいね。それじゃ一緒に遊ぼうか」 「うん!」  ミオは嬉しそうにパズルの箱を開け、ピースが詰まった袋を慎重に破り、テーブルに広げていく。どうやら新品のようだ。 「あれぇ? ねねね、お兄ちゃん。これってどうやってはめ込んでいくの?」 「え? 絵の通りにはめ込むって話じゃなくて?」 「んーん。ボクが施設で遊んでたパズルって、四角いのにはめ込んでたやつなの」  そう言って、両人差し指によるジェスチャーで長方形を描くミオの様子から察するに、どうやらこの子は枠、(すなわ)ちフレームつきのパズルで遊んでいたらしい。 「そういうのは大体、箱の底に用意されてるもんさ。ほら」 「あ! ホントだー。でも、何だかフニャフニャだね」  フニャフニャというフレーズに一瞬ギクッとしたが、ミオが言っているのは、パズルを仕上げるために必要な枠の事だ。ここは冷静に答えなくては。 「たぶん何回でも遊べるように、片付けやすい硬さにしたんじゃないか?」 「そうなの?」 「こんな大きいのはあまり無いけど、ホテルとか旅館の客室には、繰り返して遊べるパズルが割と置いてあるんだよ。立体パズルとか、知恵の輪なんかもそうだな」  そこまで言って、今どきの子に「知恵の輪」と説明して通じるのだろうか? という疑問を抱いてしまった。ミオくらいの歳の子らにこそてき面な知育玩具なんだが、今はパズル系も多種多様だからね。 「あ、ちょい待った。これ一応、自由に持って帰っていいらしいよ。完成品を飾るためのフレ……枠も用意してあるんだってさ」 「いいの? ボク、持って帰りたーい」 「じゃあ、まずは枠を探そうか。たぶんパズルと同じ場所に置いてあると思――」 「取ってくるー!」  気に入ったパズルを持ち帰る手段があると聞くや、ミオはすっくと立ち上がり、話を聞き終わる前に二階へと駆け上がっていってしまった。  よほど気に入ったんだなぁ、このパズル。二人で遊んだ思い出を形にして残したいのか、海と海洋生物とのデザインが気に入ったのか、あるいはその両方かな。  ……おや? このパズルを作ったメーカーさん、〝東条玩具工房〟っていうんだ。初めてお目にかかる名前だけど、ここ大阪へ来るきっかけをくれた関西政財界のドン、東条信三郎(とうじょうしんざぶろう)会長と何か関係があるのだろうか。 「枠持ってきたよ、お兄ちゃーん」  あれこれ思案を巡らせていると、程なくして、ミオが木製のフレームを胸に抱きしめ、嬉しそうに階段を降りてきた。 「ねねね、これでパズルを持って帰ってもいいんだよね?」 「うん。たぶん手順としては、箱にあった枠にはめ込んだ完成品を、その額縁みたいなやつに飾るんだと思うよ」 「そうなんだ! じゃあ、さっきのフニャフニャなのも使うんだね」  一応は折り畳めないほど強度のある素材だから、言うほどフニャフニャな枠でもないんだけどな。まぁ、本人が納得してるんならそれでいいや。 「よし、早速やるか。三百ピース以上あるから、なかなか手強いぞ」 「お兄ちゃんは子供の時、ジグソーパズルで遊んでたの?」 「たまーにね。これよりデカイのは、さすがに気が遠くなるからやった事ないけど」 「えー? そんなに時間がかかるってこと?」 「ははは。確かに時間はかかるけど、俺の場合は、一日で仕上げちゃおうと思うからダメだったんだろうね」 「一日で作れないのもあるの?」 「あるある。例えばピースが千を超えて、さらに難しい絵柄のパズルは頭がこんがらがる事うけあいだよ」 「へぇ。それってパズルを作る人も大変そうだねー。お店で売る前に、ちゃんと全部あるか調べなきゃなんでしょ」 「あ、そう言われると確かに。その辺、メーカーさんはどうしてんだろうな?」  といったパズル談義に花を咲かせながら、いつもの〝共同作業〟でパズルのピースを埋めていく。いかに経験のない規模だとは言えど、完成まで遊んだ事がある人なら、攻略法の一つや二つは心得ているものだ。  ……それはともかく。  密着するほど隣にくっついて、無邪気にパズルを楽しむミオの柔らかな太ももが触れるたびに、思わず胸がドキッとしてしまう現象にだけは、今になっても一向に慣れる気配がない。  やっぱり俺は根っからのショタコンなのだろうか。

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