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63.初めて尽くしのお泊まりデート(6)

 ミオを抱き上げ、窓の外を眺め続けていたら、雨が小止みになってきた。このくらいなら、明日の川釣りで増水を気にする必要はなさそうだ。  今日は安全確保のため外出を控えるとしても、食っちゃて寝ての繰り返しでは味気ない。それに、このだだっ広いコテージのことだ。室内をくまなく見て回れば、何かしらの屋内アクティビティが見つかるんじゃないだろうか。 「ミオ」 「ん? なぁーに?」 「まだ眠くなかったら、この家の中を探検してみるかい?」 「うん、しよしよー! まだ二階に行ってないから、探検してみたーい」  いい反応だ。やっぱり子供は、ことに男の子は、探検とか冒険みたいな言葉にときめくんだろうな。  あくまでコテージの中限定だけど、未知の楽しみを探すおりに湧き上がってくる高揚感は、等しく同じものだ。少なくとも、俺はそう思う。 「えへへ。今日はおうちデートだねっ!」  抱っこから降ろされたミオはそう言いながら、上目遣いで微笑み、きゅっと手を(つな)いでくる。 こういうところは、ちゃんと乙女っぽくてカワイイよなぁ。 「ねぇねぇお兄ちゃん。どうしてこのお家には二階があるの?」 「どうしてだろうな。もしかすると、一度に泊まる人数が多い時のためだとか?」 「多いってどのくらい?」 「ざっくりとだけど……大人数人がゆったり過ごせる部屋はいくつもあるし、二階も合わせたら、十数人くらいは余裕かもだな」 「えー、そんなに!? でも、今日からお泊まりするのはボクたちだけだよ」 「まぁ広すぎるよね。だから普段は、あの卸売市場の人たちが、一緒に休みを取ってここへ泊まりに来てるんじゃないか?」  という俺の推測にミオは納得していたが、あくまでも推測に過ぎない。仮に十数人がいっぺんに泊まるとしても、今あるベッドだけでは、全宿泊客が寝泊まりできないからだ。  もしかすると、推測の裏付けになりそうなものが、これから探検する二階にあるかのも知れないな。 「お兄ちゃん、二階のお部屋にもベッドが二つあるよ」 「ホントだ。普通の寝室というより、ここだけでホテルの一室って感じってくらい何でも揃ってるじゃん。ミオ、今日はここで寝るかい?」 「やだ!」  俺が聞き方を間違ったからか何なのか、とにかく、これ以上ないくらいの食い気味で拒否された。 「もぉー、何言い出すの? ボクをここで寝かせてる間に、一階で他の男の子を連れてきて浮気するつもり?」 「ま、まさか。俺が好きなのはずっとミオだけだよ」 「ならいいけど」  慌てて否定するさまが余程怪しく見えなかったのか、ミオはすぐに浮気の疑いを解き、部屋の方へと向き直る。察するに、俺が言葉足らずなあまり、「ここをミオ一人だけの子供部屋にする?」みたいな意味合いで受け取らせてしまったようだ。  俺がミオ一筋なのはホントだし浮気もしていないから、何も後ろめたくはないのだが、こうまでアッサリ信じてもらえていいのだろうか。嬉しい反面、非モテ時代のうら寂しい記憶が蘇りそうな、どこか不思議な心境である。 「あ! でもお外はキレイだし、お兄ちゃんとウサちゃんが一緒なら、このお部屋で遊ぶのも楽しそうだよ。見て見てー」 「おぉ、なるほど。ここの窓からだと街を見下ろせるのか。じゃあ暗くなったら、輝く夜景が楽しめるかも知れないね」  さすがに百万ドルの夜景とまでは言わないが、ムードは抜群だ。思いもかけないきっかけで、かねてから練っているデートプランの実現性が見えてきた。

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