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第22章 四年次・4月(6)

 前と同じように部屋を暗くした中で、結局、高志はまた茂の体に触れた。時間をかけて茂の後ろをほぐす。注意深く茂の反応を見ながら手を動かし、指を増やしながら徐々に柔らかくしていった。  半年前の茂には悲壮感があったが、今日はそうではなかった。だからこそ余計に、今の茂が何を考えているのか高志には分からなかった。前と同じように、茂は必要以上に高志に体を見せなかったし、触らせようとしなかった。下だけを脱いだ格好で高志に背中を向け、腰を上げて後ろから高志を受け入れた。  挿入する時、茂は前のように体を強張らせ、やり過ごそうとするように浅い呼吸を繰り返していた。苦痛を覚えていることは明らかだった。そんなにしてまで何故高志に求めるのかが分からず、高志はかすかに苛立ちを覚えた。  しかし高志が動き始めると、また茂の様子は少しずつ変わっていった。高志自身、抗いようもなくその快感に捕まった。徐々に激しくなる高志の抽挿を受け止めながら、茂はその呼吸の端々で、時々堪えきれないように声を洩らした。それはもはや苦痛のそれには聞こえなかったが、その声が聞こえる度、それを打ち消すように高志は一層激しく突き上げた。先ほど感じたかすかな苛立ちがじわじわと高志の頭の中を侵食し始めていた。裏切られたような、騙されたような、そんな不快感にも似た情動だった。 ――お前が言ったんだ。  そう頭の中で繰り返しながら、高志はひたすら動き続けた。  お前が言ったんだ、こうしたいと。俺とやるためなら友達をやめてもいいとお前が言った。俺の気持ちを無視して、こんなことのために。気持ちの伴わないこんなセックスのために。  そうやって考えながら動けば動くほど、もっと屈服させたい、という本能的な強い衝動を高志は覚えた。細い腰を後ろから掴みながら、容赦のない速度で何度も何度も深く突き刺しては抜く。しかし屈服させるまでもなく、茂はされるがままにただ揺さぶられていた。顔を伏せて呼吸を乱し、黙ったまま高志の蹂躙を受け入れていた。茂の、大切な友人だったはずの人間のその背中を見ながら、高志はほんの一瞬、激しい自己嫌悪で泣きそうになった。  やがて高志が茂の中で果てた後、動かないまま荒い呼吸をしていた茂はゆっくりと体を起こした。ふらつきながら立ち上がる。 「……お前も勃ってるんだろ」  高志はそう言ったが、茂は振り向くことなく、「大丈夫」と言ってそのままバスルームに入っていった。

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