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第6章 9月-自覚(6)
それ以降、週末は毎週のように希美と過ごした。金曜日の仕事帰りに落ち合い、大抵は土曜日の夜まで高志の部屋で二人で過ごす。外食する回数が減り、部屋で食べることが増えた。
あの旅行以来、茂とは連絡を取っていなかった。
しばらく距離を置けば、そのうち茂への感情が薄れていくかもしれない。そう思いながら数週間を過ごしてみたが、実際には、高志の頭の中には常に茂の存在があった。考えてみれば、自分は過去にも半年以上の期間を待っていたのだ。あの時の精神状態と今は少し似ている。あの時に茂の記憶が薄れることがなかったのだから、今回もきっと数か月程度では忘れることはできないのだろう。
そして結局のところ高志は、茂に会いたい、話したいという欲求を完全に手放すことはできなかった。時間が経てば経つほど、逆にその気持ちは強くなった。普通の友達というのはどの程度の距離感で付き合うものだっただろうか。大学時代に茂が長期休暇で帰省していた時のことを思い出してみる。あの頃はタイミングなんて気にすることもなく、思い付いくままに遣り取りしていた気がする。
結局、一か月経たないうちに、高志は自分の欲求に負けた。
ある夜、シャワーを浴びた後でベッドの上に寝転がっている時、茂にラインしよう、と思った。何でもいいから、少しだけ遣り取りできればいい。あくまで友達として。
しかしいざ送ろうと思うと、何を書いていいか分からない。大学時代と違って、今の状況では共通の話題が殆どないということに気付く。思い付く話題といえば先日の旅行に関することくらいだが、家族へのお土産のお礼を言うには既に日が経ち過ぎていた。
どちらにせよもっと早いうちにお礼は伝えておくべきだった、と思いながら旅行のことを思い返しているうちに、ふとあることが頭に浮かんだ。くだらなさ加減がちょうど良いように思えた。深く考える前にメッセージを作成する。
『うちの家族がお前はイケメンだって言ってた』
そのまま送信し、しばらくすると返信が来た。
『何の報告w』
ごく短いそのメッセージで、高志は驚くほど楽しい気分になった。
部屋の中で一人で少し笑い、返信はせずにそのままスマホを置いた。
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