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6:作り話(絶頂)

「そのうち、」    フロムも含め仲良くなり、3人でよくつるむようになりました。  最初は我の強い二人同士、喧嘩する事も多かったですが、そのうち二人は良いコンビになりましたよ。  行動力のあるフロムと、頭の良いオブ。この二人が揃うと、普段のイタズラにも磨きがかかって面白かったですね。  そこから5年間はあっという間でした。  その世界では成人が16歳。  それを1年先に控えた俺達は、3人で将来の夢を語り合うようになっていました。    フロムは王都で国王軍に入るのが夢だと語っていました。 ついでに妹のニアと結婚することも夢だと。兄としては複雑でしたけど、まぁ、その頃には二人は良い雰囲気でしたからね。応援してましたよ。    オブは将来は国王議会の一員になれと親から言われていたようですが、本当は医者になるのが夢だったんです。オブは頭が良いから、きっとどちらにしても成れるだろうと俺は思っていましたよ。  ついでに俺は自分の酒場を持ちたいという夢を持っていました。自分の畑で採れたレイゾンで酒を作るんです。ただ、どんなに苦労して作ったレイゾンも売る時は安価な値段で王都へ売られてしまうので、そんなの到底無理です。だから、俺達の村はずっと貧しいままだったんですよね。俺達は安価な労働力でしかない。 だから、現実的に考えて、そんな事は無理だと分かっていましたけど、夢は夢です。  こうして、3人で語り合っている時は本当に 「……幸せでしたね」 「………………………」    若干、しんみりしつつあるのはそろそろ年齢的に俺が死ぬ頃だからだろう。 俺も無駄に切なそうな口調で語ってるのだから、ノリノリもノリノリだ。  ちなみに、将来酒場をやりたいというのは今の俺の夢だ。自分好みの酒場で客の面白前世話を毎日聞いて過ごすなんて、楽し過ぎるだろ。  そう、作り話も、合間合間に現実を入れていかないと即興で全部作り物にするなは難易度が高すぎる。 「マスター!ボトルもう一本開けてくれ!」  そう叫んだのは俺か、画家の男か。 最早わからなくなりながら、話はラストまで駆け抜けていく。 「けれど、そんな幸せな日々も」  長くは続きませんでした。  その冬、北部地方から疫病が蔓延し始めたのです。  その病は虫を媒介にし、人にも感染するもので子供や年寄りは、かかればひとたまりもありませんでした。  発症したら高熱が続き、1週間以内で死亡してしまう。  虫から人へ伝染るのだから、もちろん人から人へも容易く感染します。  そういう流行病と呼ばれるものは、やはり衛生状態があまり良くない所からやられていきます。  そう、俺達の村のような所です。  病院なんて村にはないし、対策の為知識もない。国から何かお達しがあるわけでもない。  ただし、感染拡大を防ぐ為、首都への出入りは厳しくなりました。  地方の住人、特に貧しい人間はかかったら終わり。それだけなんです。 「どの時代変わらないものだね」 「……そうですね」  まぁ、そんないくつもの時代を渡り歩いてないので俺には、わかりかねますけどね。  さぁ、そろそろクライマックスだ。 「村でも弱い者から感染者が出る中、」    俺は若者の中で真っ先に、その流行病に感染した人間でした。  俺は家の仕事柄、よく森へと出かけていましたから、きっとその時にでも虫に刺されて感染したんでしょう。  ほんと、運が悪い。  俺は熱に侵され続けました。  けれど流行病故に特効薬もありません。まぁ、きっとあっても買えなかったでしょうけど。   「何故なら、うちは貧しかったから……」 「いつの時代もそうですよね」  画家の返答が、一本調子になってきた。これは本当に早めに終わらせないと、ヤバいだろう。  はい、サクッと終わらそう。 「病に倒れてから、」    当たり前ですけど俺はフロムにもオブも近づけなくなりました。というか、すぐに動く事もままならなくなりましたよ。  そんな中、両親は妹に伝染るといけないと俺に家から離れた納屋に行ってくれと、泣いて頼みました。  これは両親からの「一人で死んでくれ」という宣告だという事くらい、賢くない俺でも分かります。  両親も辛かったでしょうね。我が子にそこまで言わなければならないなんて。  俺は泣く両親に「熱が下がったら戻る」と伝えると、そのまま納屋に向かいました。  その冬は、例年よりも格段に冷え込む冬でした。お陰で納屋は冷え込み、体力も限界だった俺の記憶はそこから酷く曖昧です。暑いのか、寒いのか、体中が痛くもあったし、感覚も曖昧なようでもありました。  もう無理だな。  そう、俺は誰からも看取られず死ぬ事を覚悟 「……した時でしたっ」 「…………っう」  という、設定あたりで俺も画家も号泣して言葉にならなくなっていた。  ドラマティックが過ぎる。酒が回り過ぎるて、ドラマティックが止められない。

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