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第1話

ここはブロルドと呼ばれる国。 この国に住む約半数は貴族である。その為か、他の国と比べとても華やかな印象がある。 レオネルはこの国で産まれ育った。近場で人気のお菓子屋を経営する父と母と3人で暮らしている。時折時間が空いた時にはレオネルも店を手伝っている為、常連客からとても親しまれている。 「ジルさん、こんにちは!今日も来てくれたんですね!」 今日も手伝いをしていたレオネルは、見慣れた客へそう声を掛けた。 「やあ、レオネル。今日もいい天気だね。パウンドケーキを6つ頂けるかい?」 「ふふ、いつもありがとうございます!すぐご用意しますね!」 注文を受けたレオネルは、ショーケースに入っているパウンドケーキを1つずつ透明な袋へ詰める。その後白い紙袋へ丁寧に入れ、中身が見えないようテープで留めた。お会計を――と思った時、後ろで作業をしていた父が声をかけた。 「おっ、ジル!うちの息子、お前んとこのアレクと同じ学園通うからよ、明日からよろしく頼むな」 アレク、とはレオネルの幼なじみである。今来ている客ジルはそのアレクの父親だ。 「ちょっと、父さん……!」 同じ学園へ通うことをアレクには伝えるつもりがなかったレオネルは、父の言葉に思わず声を発した。その様子を見ていたジルは、笑みを漏らしながらも2人に話しかけた。 「はは、そうか。妻から少し話は聞いていたんだけど、良かったね。うちの息子も喜ぶよ」 「ありがとうございます。できればアレクには内緒にしてくださいね!!」 ニコッと効果音がつきそうなほどの笑みをジルへ向けたレオネル。それを見たジルは「わかった、わかった」と笑いながらもレオネルの願いを聞いてくれた。 もうすぐ16歳になるレオネルは、ドルシウ学園という貴族が多く通う学園へ入学することになった。 アレクの母にドルシウ学園を勧められたのがきっかけだ。学園の名前を聞いてから、レオネルは何故か分からないが、この学園に行かなければ――という衝動に駆られた。初めて聞く名前のはずなのに、懐かしさを感じる不思議な感覚。これが何なのか知りたい。レオネルは、そう必死に両親を説得し、入学試験を受けることにした。 貴族ではないレオネルにとっては、かかる費用があまりにも高額で。入学試験で3位までに入れば学費が免除されるから、と父にしごき倒され、なんとか3位で合格した。

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