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第3話
庶民と話しているアレクを見たら、その人はアレクの事を悪く言うんじゃないか。学園に入学しても知り合いだと思われないように過ごしたい。そう考えていたレオネルだが、アレクにとっては身分など関係なく、唯一の友人としてレオネルと一緒に学園生活を過ごしたかったのだ。
「ねえアレク、いつから気づいてたの?」
言葉を発するのを躊躇してしまうくらい静かな車内で、レオネルはふと疑問に思ったことをアレクに問いかけた。
「気づいたっつーか、母さんが俺には言うなよってコソコソ親父に話してるの聞こえちまったんだよ」
「ふふっ、そっか。じゃあ結構前から知ってたんだね」
先日アレクの父であるジルがお店に来た時には既に聞いた後だったようなので、アレクも知っていたのだろう。レオネルはあの後何度かアレクと会っているが、知っている素振りを全く見せなかった事を考えると、レオネルから言い出すのを待っていたのかもしれない。そう一人考え、少し気分が落ち込み始める。
「まあお前が気になるなら話しかけないようにはするけど。俺、友達お前しかいねえからなあー。話せるやついなくて引きこもりになっちまうかもな」
アレクは気分が落ち込んだように見えるレオネルをじっと見つめ、ふざけたようにそう言った。
「ふふ。友達いないなんて絶対嘘でしょ!でも、引きこもりになったらジルさん達に悪いしなあ〜。仕方ないから話し相手になってあげるよ」
「おう。そうしてくれ」
気付けばさっき見た多くの見物人の波をあっという間に通り過ぎ、学園の出入り口前。
「お二人とも、着きましたよ。」
運転手はドアを開け、二人に声をかけた。アレクは慣れた動作で車を降り、レオネルもそれに続いた。運転手が扉をしめたのを確認してから声をかける。
「あの、僕まで乗せてもらってすみません。ありがとうございました。今度うちの焼き菓子持って行きますね」
「いえ!いつも坊ちゃんがお世話になっていますから。お気になさらないでください。またいつでも遊びにいらしてくださいね」
それでは、とアレクとレオネルに頭を下げてから運転手は車に乗り込んだ。
ジルから聞いた話だと、前まではアレクが見えなくなるまで運転手が見送りをしていたが、年頃なこともあり、拒否されてしまってからはなるべく早く屋敷に戻るようになったらしい。
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