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第十六話 告白 下

   褒めてくれていると思った蓮は歓喜して腰の力が抜けてしまった。湯にも打たれ続け、熱さで朦朧としてしまう身体がまるで言うことを聞かない。 「へにゃへにゃになってるよ。これからお礼しようと思ってるのに」 「い、れるのか…?」 「さぁ、なんだと思う?」  晴はくるりと蓮を後ろ向きにさせた。うっとりとした声色で「壁に手をつけて」と耳元で囁かれる。膝立ち状態で言われた通り壁にもたれかかる。  正直手だけでは膝立ちも危うかった。だからぴとりと冷たいタイルに頬をくっつけた。  お尻を見られている状態にそわそわとした蓮はちらりと晴を見ると双丘の間に顔を埋めているのが目に入り、とっさに暴れだす。 「だめ、だめだ…っ! そこ、汚い、汚いから……っ。そんなことしなくても、もう」 「兄さんはどこも綺麗だよ。俺が舐めたいの」 「ひ、や、いいから、いれて…っ」 「俺は舐めたらいけないの? 他の人は許したのに」 「そんなとこ、だれもしてないっ!」  震えながら訴える。晴の息が後孔に掠れ、ひくひくとさらに収縮を大きくさせているのがいやでもわかる。そんなのを見られているだなんて、死にそうだ。 「なら、なおさら舐めたいな。自分ではできないことしてもらえるんだよ。この俺が。奥まで濡れた舌が入って、肉を一つ一つ丁寧に(なぶ)ってあげる」 「あっ、あ…っ」  にゅるにゅると動く熱い舌が中に入ったら、きっと腰が砕けて溶けてしまう。  蓮は想像しただけで、腰がかくかくと揺れているのが目に見え、耳が熱くなるのを感じた。 「想像より飛んじゃうくらい熱いと思うよ。俺だけのものにしていいんでしょ? 蓮の口より下の、中の口の方が素直だね」  くぱくぱと指で穴を広げようと拡張する。ぐるぐると頭の中でいやらしい妄想が流れ、快楽のその先へと誘われてしまう。 「して…」  熱を帯びた色っぽい声で精一杯誘う。目と目が合わさると意地の悪い顔が瞳に映る。 「なに? 聞こえないよ」 「して、ほしい…っ、なぶって」 「嬲ってそれから?」 「なぶって、はるのだえき、いっぱいいれてほしい…」 「俺で満たされたいの? 口も下の口も。欲張りな兄さんだなぁ…まぁ俺に対してだけ欲に従順なとこ嫌いじゃないよ」  そう言い残すと中の肉が火傷しそうなほど熱い舌でぐにぐにと肉環を掻きわけられ、深く侵入してきた。肉厚な舌はうねる洞肉の粒を一つ一つ弄るようにじっくりと舐めていく。 「あぁっ、あっ、あ、あ…っ」  さらに奥へと誘いこむような甘い喘ぎ声が止まらず、蓮は力が抜けていくのを感じた。まるで中で生気が吸い取られてしまったようにずるずると顔が下に下りていってしまう。尻だけが突き出している体勢にすら構ってられないほど感じまくっていた。  波の動きをするように舌が上下運動を繰り返すと突然双丘をがっちりと掴まれ、上に上げられた。顔は床に這い(つくば)り、猫が背伸びしたような状態にさせられる。  ぬるるっと舌が抜けていく感覚にぶるぶると内腿を震わせた。抜けたとき、一緒に力が入らなくなり、手が脱力する。すると晴が口に溜め込んでいた唾液をたっぷり後孔に垂らしていく。ひくついた隙間から中へと入り込んでいく。もっとも漏れないように指で拡張しながら流し込んでいく。  生温かいものが入り込んでさらに中が灼けるように燃えるのを感じた。 「ひっ、やぁ…っ、あ、あっ」  栓をするかのように大胆に舌も捻じ込んできて、蓮は悲鳴のような声を上げた。流れ込んでくる精液とはまた違うものに、下半身が馬鹿になったかのように快楽しか受けつけなくなる。もう駄目だと消え(かす)の理性が叫んでいるのに、どこか遠いところへ押し流されてしまったようにその声が遠くなる。とたん、お尻すら上げられなくなった蓮は横に倒れこむようになり、強制的に舌を抜かせてしまった。 「あっ、あ——…っ、あ——…、あ、あぁ…っ」  中が繋がったかのように全身に快感の波がびくびく余韻を引きずらせた。肩で息をしながら、とろとろと愛液を流す自分のものを見て、いたたまれなくなる。身体に力が入らないはずなのに、防衛本能か背を丸めて、縮こまる。 「猫みたいだよ。けど、これぐらいで痙攣してもらっちゃ困るよ、兄さん。これからたくさんここに突いてあげるのに」 「あ…、あ——…っ、ああぁあ」  とんとん、と(へそ)のあたりを叩かれ、電気が走った。迫ってくるあの感覚が勢いよく精路を駆け抜け、ぴゅっと性器から白濁を飛び散らせた。 「あ、ちょっとやりすぎたか。ほんとは優しくするつもりだったんだよ? けど兄さんの乱れっぷりを見たらとまんなくなる。兄さんもこれ以上乱れる予定だから、気にせず俺にだけ痴態を晒してね」  そう言うと両腕を背後に引っ張られ、膝の間に座らされる。背中を預けた状態で顔が見えない。けれど密着した肌に晴を感じ、身体から花のような甘い蜜が溢れ出てくる。不安になりながらもドキドキといつも以上に高揚していた。  壁にもたれかかっている晴は腕を一旦離すと、お尻を持った。浮いたことに蓮は「え」と思ったときにはすでに躊躇なく怒張したものを腹の中に串刺した。 「ッ~~~~!」  声なき声が飛ぶ。目の前は花火が上がったのかシャワーの光なのかチカチカと閃光が舞った。肉環を抉り、みちみちと開拓させられた苛烈な刺激に喉を反る。手で抵抗しようと動かそうとしたときには両腕を背後に持っていかれていた。恋人繋ぎで後ろに引っ張られ、腰だけを上に向かって突いてくる。 「あっ、あぁ、あ、あ…っ、ん、んんあぁ~~~…っ」  突かれるたびに前立腺が刺激され、奥を抉じ開けようとごりごり先端をぶつけてくる。媚肉が凄絶(せいぜつ)にうねり、襞が晴のものに張りつく。蓮はあまりの快感に涙と唾液を垂らしながら美しい母音だけを歌う。 「奥とんとんされるとかわいい蓮兄のからぴゅうぴゅう白いのこぼれるね」 「あっ、あ…っ、や、やぁっ」 「どうして? 感じてくれてるからかわいいって言ってるのに俺の言葉信じられなの? それとも、足りないのかな」 「アッ、ああぁっ!」  ばちゅばちゅっと淫らな粘着質のある音が奏でられ、痙攣している媚肉は激しい勢いで蠕動している。中も外も、どの音楽よりも荒々しい音色を奏楽させ、脳は狂ってしまった。 「普段麗らかな音楽を好むのに、セックスだけはバンドみたいな激しいのが好きだなんて誰も信じられないだろうね」 「あ、あ…っ、あ、もう、だ、め、ぇ…っ、っ、あっ、んん、ッ——」 「いいよ。さっきのシャワーや唾液なんか比べ物にならない俺のを出してあげる。満足できるまで何度でも」   晴の律動が速まったのを握っている手からも感じる。中は晴のものが汁を撒き散らしながらぐぽぐぽと突いてくる。形を覚える暇もないくらい欲望を叩きつけられる。それと同じくらい快楽も反芻するほど刻みつけられる。  動くたび足が開いていく。シャワーが身体に当たってその刺激がさらに興奮材料になって感じてしまう。 「はる、はる…っ、すき、あっ、あ…っ、すき、すき…っ、あ、あいして、る…っ、あ、あっ、いっ、う、ぅん…っ、んぁ、あ、あぁっ、っ~~!」 「俺もすきだよ。蓮、愛してる」  そう耳で受け止めると、腕が腹に回ってきて、力を込めて下に下げる。体重がのしかかった下半身はぐぽっと最奥を貫き、吐精した。重ったるい熱液が中で大量に噴き上げられている。植えつけられている熱い種に打ち痺れていると背中のあらゆる場所に口づけをする晴がぶるりと震えていた。  射精もせず、中だけで極めてしまった蓮はぐったりと晴に背中を預けて倒れこむ。まだこれからといった獣のような動乱した笑みを堪えている晴に愛くるしさを感じ、頬を擦り寄せた。  顔を向かい合わせた晴は少し驚いたような顔をした。蓮はそのまますりすりと頬を擦りつけ、ちゅっちゅっ、と軽い口づけを何度も違う場所に繰り返す。 「明日、俺も家にいるからずっと抱かせて」  最後にそう吐き捨てると、抜かないまま足をがばりと開かされ、持ち上げられる。  あろうことか、そのまま立ち上がった。 「ひゃっ、あ…っ、なに、まだ、あ…? あっ、あぁあっ」  動かないで、と出したはずの声を無視するように濡れたまま寝室へと歩き始めた。 「あっ、あぅ…っ、やっ、ああっ、うごいちゃっ」 「きもちいい? 歩くたび、締めつけられる」 「あっ、あ」  一歩一歩晴が寝室へと足を進めるたびに、ずんずん、と奥を叩かれて、快楽の神経の巣窟がついに崩壊する。 「あぁん…っ」  蓮は可憐な色気を漂わせる声を出すと射精してしまい、廊下を汚した。びくびくと痙攣し、晴の足に垂れていく白いものをただ見ることしかできなかった。  絶え間なく支配する甘美な余韻に浸る。 「イキそうなら言ってくれればよかったのに」 「いって、も、やめない、くせに…っ」  息もできないのに、言わずにはいられなくて暴言を吐く。それがお気に召したのか、喉を嬉しそうに震わせながら寝室へと歩いた。  寝室に入って、ベッドの上で乱暴に後ろから穿(うが)たれ、また絶頂する蓮。執拗以上に責め立てられ、何度もお尻でイカされた。  イキすぎた下半身は弛緩(しかん)しきって、開いたまま塞がらない口からは唾液がこぼれ、喘ぎ続ける。部屋中淫猥な音だらけで耳すら犯される。  抱かれ続けた蓮の身体は完全に自分の身体じゃなくなった。乳首に触れられるだけで達してしまい、性器を扱かれれば何度も極めてしまう。後ろは出された精によって泡立ち、解かさなくても晴のものを何度でも求め、美味しそうに締めつける。一旦抜いたとしてもずっと中に入ってるのが当たり前のように感じ、ひくひくと収斂続ける。 「あらら、蓋するようにアナルプラグ毎日つけておく?」  どうする、と問われてお尻を撫でられる。蓮の下腹はきゅきゅうと引き締まり、晴のものも離さない。でもそれはまるで、形、大きさを腹の奥で覚え、感じようとしているようだった。それに興奮してしまった蓮は何度も「はる…っ、はる…ぅ」と猫が媚びたような甘い声を出す。  もうなにもできない身体と頭なのに、晴を求めて尻を動かす。 「ずっとそうやって俺だけ求め続けてよ」  言われた通り、はしたなく腰を揺らす蓮。満足そうに顔を歪めた晴がまた中で弾けた。その快感だけで身体を震わせながら達してしまう。  身体が全く冷めていかない。熱い身体はひたすらただ一人の男に愛を捧げる。  蓮は夢のようだと微睡んでいたら、泥のように眠ってしまった。  

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