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第39話
うとうとしながら、宮下のかたちを確かめる。
少し細身で、マッチョではないがバランス良く筋肉が付いている。尻は小さめで固くて、よく食べるけれど腹は出ていない。……俺はあっと言う間にぷっくりしたというのに。
それから手足がひょろりと長く、楽器をやったら上手いんじゃないかと思うような長い指。手をつないで指を絡めると宮下の指が余って、俺と比べたら細い指が、そろと手をなぞるのが好きだ。
首も長くて、首筋や鎖骨、喉仏の形はきれい。……というか顔が小さいのか? 夏の首元が広い服装や、ワイシャツの胸元のボタンを開けている時は、思わずその骨の造形にうっとり見惚れてしまうほどだ。
なんていうか全体的に、今時の若い子って感じで、女性には年齢関係なく好まれる感じ。ゲイにはどうだろうな。もっとガッシリしていた方が好かれるけれど、最近はきれい系がモテるから……。多分抱きたいってやつもいれば、抱かれたいって思うやつもいる、そんな感じ。
顔も、体形に見合った面長でいわゆる塩顔系。なのに笑うとくしゃりとなるのが可愛くて、よく見るとまつ毛がやたらと長い。まつ毛の長さなんて、化粧する女性じゃなきゃ気にしないと思っていたけれど、まつ毛の影が頬に落ちるのを見るとドキリとする。なるほど、女性はこれが良くてまつ毛を長く見せるんだな、と思うような。
自分は顔にはこだわらない方だとは思っていたけれど、改めて見ると顔面の威力ってのはすごい。イケメン好きと豪語する女子社員をもう笑えない。きゅっと男らしい濃い目の眉に、穏やかに閉じた瞳と長いまつ毛、するりとなめらなか頬と鼻筋、濃いピンクのぷるりとした唇。
きれいな横顔に、極わずかに伸びてきたあごのひげが男を主張して、ドキドキする。
つりあいなんて考えても仕方ないんだけど、ま、どう見ても俺と並んだら上司と部下、もしくは親子。そんなことはわかっているけど、それでも俺がこいつにぞっこんなんだと思うとなんか笑える。
いや、そっちはまだいい。宮下が、俺を好きなんだと思うともっと不思議な気がする。やたらと自分を卑下するほど子どもではないけれど、こんな子に好かれて舞い上がっているのは否定できない。
身体の線をたどっているうちに、もぞりと宮下が動いて、ぎゅっと抱き込まれる。子どもがぬいぐるみを抱くみたいな、反射で抱きしめているんだろうけど、じわりと身体の真ん中から幸福感がわいてくる。
コツリと額を宮下にあずけて、大人しく寄り添う。長い足が、素足にするりと絡む。ざり、と脛毛が逆立ってゾクリとする。
うーん……、昨日散々したんだけど、寝て起きて体力が回復しているから、少しの刺激でも意識して、下半身に血が集まる。もう、この半年ほどで身体に刷り込まれた条件反射。といっても、こっちは一日に何度も射精できるほど元気じゃなくて、本当にただ条件反射っていうか。
それでも触られると気持ち良いし、ゴールが射精じゃなくなっただけ。脳みそがぐちゃぐちゃになる快感もいいんだけど、抱きしめ合ったり、前戯のような快感が楽しめるようになったのは発見だった。
……まぁ、若い宮下には物足りないんだろうけど、そのおかげで純粋に宮下を愉しませる楽しみもある。つまりは、こういう、な……。
密着して宮下の固くなった熱を感じている腹の間に手を伸ばす。俺のも少しずつ熱を帯びてはいるんだけど、宮下のはそんな控えめなやつじゃなくて。朝の生理現象なんだけど、それに刺激を与えて快感に置き換えられていくのは、それはそれで何とも言えない気持ち良さだ。
そろそろと差し込んだ手で、熱く形を変えている宮下に触れる。指先で形と固さを確認して撫でる。射精まで追い込むような動きではなく、猫を可愛がるみたいなそれ。
育てているみたいな感覚が楽しくて、何度もなんども撫でているうちに、徐々に大きさを増していく。充分に固くなったら、そろともっと下を探る。まだ柔らかな袋に触れて、中にある玉を確認した。コロコロと袋の中で転がる感触を楽しんで、袋の付け根から全部を撫であげる。
ヒク、ヒクと宮下の性器が跳ねて、快感を感じていることを伝えた。ぽこりと膨れ上がる血管に直接触れたくなって、パンツの中に手を忍ばせる。布越しよりも一層熱いそれに、夢中になる。
抱き込んでいた宮下の腕の力は抜けて、だらりと身体の上に乗っかっている。このまま宮下が起きてもかまわないんだけど……。そろそろと腕の中を抜け出して、身体を下にずらしていく。
「ん……」
寝たまま呻いた宮下の、力が抜けてやわらかな腹筋を撫でる。くすぐったさに時折ピクリと動いてくすりと笑う。気付いて欲しいような、欲しくないような……。
ずるずると身体をずらして、パンツから顔を覗かせている性器まで辿り着く。持ち上がった布団の隙間から冷たい空気が流れ込んできたけれど、とりあえずそれには目をつむる。
中途半端に下ろしたパンツのせいで腹に押し付けられている性器を、パンツをずらして自由にした。自身の重みで揺れるそれの、先端を口に含む。なめらかな皮膚を舌で楽しむと、それはきもちいいというようにピクリと震える。
その反応が可愛くて、愛撫する口に熱がこもる。
手で支えて下から舐め上げ、気持ちよくさせたくてただ無心に舐めた。口と手を使った愛撫を続けるうちに、気持ち良くさせているのか、そのことに興奮して、自分が気持ち良くなっているのかが分からなくなってくる。
ぼんやりとしてきた頭を、ゆっくりと長い指が撫でて、宮下の目覚めを知った。夢現でふんわりとした手が、頭を両側から包み込む。指が耳に触れ、もう一方の手に後ろから首筋を撫でられててゾクゾクする。
反射的にピクリとして、思わず息がもれる。
「ふぁ…ぁ…。宮下、起きた?」
「…ん、起きました」
布団越しに聞く寝起きの掠れ声が頭に響く。このままイって欲しくて、愛撫に熱が入った。
「加藤さん……、このままいーの?」
「ん、このまま、イって……」
咥えたままもごもごと答えると、頭に添えられた手に力が入る。最初は、寝起きでこうしていたら驚かれたのだけど、何度も繰り返すうちに宮下も慣れている。口の中でイって欲しいと言うのも、最初は抗われたけれど、いつの頃からか宮下が諦めた。
じゅぽ、と音をさせながら頭を上下する。長い指が俺の髪をかき乱しながらその動きを助けた。
宮下は我慢することなく、素直に快感を受け止めて解放する。
ぐっと喉の奥で熱い体液を受け止めた。独特の苦みと匂いが口腔に広がって、ぞわぞわとした快感が身体の中を走る。口の中に直接施された快感と、宮下が俺で気持ち良くなっていたっていう精神的な快感。
最後の仕上げに快感の残滓を拾うように舐め上げる。宮下の性器が力を失って行く様子を、ゆると撫でながら眺めた。
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