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第61話
ちょっとの焦らしは好きだけど、過剰な焦らしは好きじゃない。なんだか十分に焦らされた気がするのは、俺が宮下との関係に溺れているせいなのか。それとも堪え性がなくなったのか。
どっちにしろ素直な快感が欲しくて、もういっかと起き上がると「これ探してますか?」と宮下がローションを差し出す。
「……準備良すぎるだろ」
「いや、せっかくのふわふわの布団だしそういうこともあったらいいなと思って用意しときました」
「せっかくふわふわなんだから、もう汚すの嫌だぞ」
「俺はいいですよ。明日また洗ってきますから存分にやっちゃってくれても」
「バカ、いやだよ」
昨日のことを持ち出されて恥ずかしがると、すいと腰を撫でられる。
「可愛かったのに……」
「またそれ言う。それ言われるとむずかゆいんだよ」
「でも可愛かったし。……それに、梗平さんも気持ち良かったでしょう?」
「ま、そりゃ……。悪くはなかったけど……」
「ね?」
にこりと笑顔で言われてその可愛さに思わず見惚れる。
「じゃあ、今度は奎吾もする?」
「えっ!?」
「やってやるよ」
「……そ…れはちょっと……」
とたんに宮下の歯切れが悪くなって笑った。
「興味ない?」
「んー……。気持ち良さそうだったけど……」
素直なそれに、まあわかるよ、と頷く。恋人を気持ち良くさせるのは際限なくさせてやりたいけれど、それが自分に返ってくるとなると、話は別でちょっと尻ごんでしまう。
言ってみれば、ネコは気持ちいいと知っていても自分がやろうと思わなかった、それと同じだ。未知の快感は怖い。そのとっかかりみたいなのがあればまた話は別なんだろうけれど。
「大丈夫、いつも出すのよりちょっと気持ちいいみたいな感じだし……」
気持ち良さに夢中であえぐ宮下が見たい。
興味と戸惑いとで歯切れの悪い宮下に笑って、また考えておいてよと言った。
「やっぱり……、梗平さんもこっち…、抱きたいとか思ったりしますか?」
食い下がった俺に、遠慮するみたいに宮下に聞かれて、宮下が抱かれる心配をしているんだと気付いた。
正直に言えばいくら抱かれるのに慣れて気持ち良くなったからって、宮下を抱きたいって気持ちがないわけじゃなくて、気持ち良さにぐちゃぐちゃになる宮下を見たいと思う。
セックスはひとりじゃできなくて、互いに求め合うとか、譲歩とか、高め合うとかなんそういう相乗効果みたいなのが大切だってのは重々わかっている。
けれどやっぱり本能の部分みたいなところの支配欲みたいなやつだろうか。それとも子孫を残すための生存本能みたいなやつだろうか。好きの気持ちはイコールで抱きたいに繋がっている。
まあでもそれは本能的な願望の話。その上に、打算だとか、宮下と別れたくないっていう怯えだとかそういうのを足して考えると、やっぱりネコは俺でってところに行き着く。
単純にどっちが気持ちいいかという話をしてしまえば、相手に身を委ねることさえ出来ればたぶんネコの方が気持ちいい。
だからまあ極端な話、複数でのセックスか固定のパートナーとのセックスの両極端であれば、圧倒的に抱かれる方が気持ちいいと思う。
つまり、若くて性欲旺盛な恋人が後ろで気持ち良くなることを覚えてしまったら、俺が相手するだけでは物足りなくなるんじゃないかとか……。そういうことを考えたりしている。
完全な打算というか、蛇足というか、そういう部分の話ではあるんだけれど、不安要素は一つでも減らしたい。
だからタチネコの逆転ていうのは考えてなくて、このまましたいと言ってくれる限りは、このままでいたい。
ちょっと不安そうに答えを待つ宮下が可愛くてつい笑う。
宮下と付き合う前なら可愛いは遠回りにでもイコールで抱きたいに繋がっていた。けれど今はそこはイコールじゃない。年齢のせいなのか、抱かれるようになったせいなのかは分からないけれど。
「奎吾は可愛いし、そう思うこともあるけどな」
「……やっぱあるんだ」
「まあ、あるだろ」
「そーなんですね……」
当然だろと言い切ると宮下が少し迷った顔をして、また笑ってしまう。
「あるけど、するつもりはないから。今のままで気持ちいいし、それに……」
言いながらローションを手に取って、股の下に手を突っ込んだ。そのまま陰嚢の裏から尻の間に挟まれている宮下の熱く硬くなった性器に触れて、そのままローションを塗りたくる。
「ぅっ……、きょ、へー……っ」
宮下が思わず、といった様子で声をもらす。それが可愛くて、ぬめぬめの手のまま握って裏側までローションを塗った。
「かーわいい……」
腰を動かして宮下の性器をこすりながら、今度は自分の股間にもローションを足して塗りたくる。
二人の密着した部分がぬるぬるになって、身体に圧迫された宮下の性器が大きくなっていくのを尻の下で感じる。
宮下をこすりあげる皮膚の部分は、守っていた毛がなくなった分少しの刺激も敏感に感じ取って、腰から背筋がぞわぞわする。それを心地よく感じながらそれに流されないように我慢する。
ふっと息をはいて身体の舌で快感に耐える宮下の胸に手を突いた。ついでにその先端でピンと立っているこごりに触れる。
「こうやったら、奎吾の可愛いところ見れるしな?」
ぴくりと身体をふるわせた宮下の胸の突起を推すと、宮下はもう一度ぴくんと身体を固まらせる。股間のローションまみれの手は、そのまま宮下の性器に絡めてぬるぬるの性器と尻とをこすり合わせた。手探りで二人の間に挟まれている性器の敏感な場所を探ると「うっ、ぁ」と宮下が堪えきれなかった声をもらす。
その宮下の姿を見ているだけでいつも以上に興奮して、疲れ気味だったはずの俺の性器も元気を取り戻してひくひくとひくついていた。
前後に揺らす腰の動きに合わせて、放り出されたままの俺の性器が自分の腹を叩くぴちりという音が時折響いている。
「きょーへーさんの、ゆれてる……」
俺の姿を見上げていた宮下が、すげえやらしい……と呟く。その声にぞくぞくと感じて、一瞬動きが止まる。
「ねえ、こすりつけてるだけで、気持ち良くなってるんですか?」
宮下の手がするりと足から腰を撫でて、ん、と息をつめた。陰嚢の裏側の毛のない敏感な場所は、宮下の性器でなでこすられて、いつの間にかとんでもなく敏感になっていた。
けれど……。いや、だからか、それよりもっと前の部分が期待していた。
毛の無くなった下生えの部分がひくりとひくついている。誘惑に抗えずに身体を後ろに引くと、押さえていたものがなくなって、ぴょこんと宮下の性器が勃ち上がった。
目で見る凶暴とも可愛いとも思える性器に、なんとも言えない愛しさを感じてぬるぬるの指を絡める。そのまま隣で揺れている自分の性器と合わせると、その熱さにびくりと身体が跳ねあがった。
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