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第8話

目線を外されて、少し寂しい気持ちになった。 でも、俺は人の顔を許可なくベタベタ触っていて流石に失礼だと思った。 「ご、ごめんなさい!俺…失礼な事を…」 「いや、気にしてない…それよりクロス、彼を何処から連れてきたんだ?」 「俺が昼寝していた場所だから……パーティー会場とそう遠くない場所の木の下で泣いてたんだよ」 「……泣いて」 フレンさんは、もう乾いているが頬に残った涙の跡に触れていた。 眉を寄せて悲しそうな顔をしていて、この人も俺の事で心を動かしてくれる優しい人だと思った。 怖い事はあったが、それだけじゃないんだと思った。 俺は大丈夫だとフレンさんの腕に触れようとしたら、その前にフレンさんに腕を掴まれた。 何も身につけていない方の手で触れたら良かったのに、ブレスレットの方で触れようとしてしまった。 眉を寄せて、ちょっと怒っている感じがして少年の方を振り返った。 「クロス、まさか…彼は悪役になったのか?」 「その手枷をしているならそうなんだろうな」 「………」 フレンさんが俺の腕を掴む手に少し力が込められていて痛かった。 やっぱりこれはブレスレットではなく手枷だったんだ……ますます囚人のようだ。 フレンさんがなにか言う前に、俺とフレンさんの間に少年が割り込んできた。 俺を背中で隠すようにしてくれて、フレンさんはさっきの怖い顔ではなく呆れた顔をしていた。 「何のつもりなんだ?」と聞いている声にも敵意は感じられない。 少年はフレンさんの顔をジッと見つめていた。 「フレン、俺の話を聞け」 「今聞いてる」 「俺はこの子は悪くないと思ってる」 「手枷を付けてる、それがあるなら彼は我々魔導士の脅威になる」 「彼は何もしていないと言っていた、俺は信じる!」 「……他に理由は?」 「手枷が壊れているかもしれない!」 フレンさんは呆れたため息を吐いていて、俺の方を少年越しに見ていた。 手枷を付けているから悪い?……もしかして、人の物を取ったから犯罪者といわれているのかもしれない。 違う!泥棒じゃなくて、何度も返しに行ったのに返せなくて…… それこそ嘘の話だと思うよな、返しに行ったいつの間にか手元に戻ってました…なんて… 持ち主に返そうにも、もう持ち主はいないし…名前も分からない人をどう探せば良いのか。 とりあえず、俺は自分の意思で手枷を盗んでいない事を話した。 今までの俺の周りの人達だったら、何言っても無駄だったけど…きっとこの人達なら信じてくれるかもしれない。 二人は驚いていたが、フレンさんが少年を押し退けて俺の前に来た。 「その手枷は君のものではないのか?」 「…え、はい…落し物を拾っただけです」

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