1 / 3
第1話
何度だって、夢を見る。
それは淡い初恋で、叶わない恋の夢。
幼馴染の川中和樹に恋をしたのは、俺がまだ中学生の頃だった。
クラスのやつに目をつけられた俺は、校舎裏に呼び出された。
漫画やアニメではよく見る展開だけれど、自分の身にそんなことが起こるとは思っていなくて、どこか他人事のように考えながら、クラスメイトに殴られるのを受け入れていた。
抵抗したって意味が無い。
俺ができることなんてたかが知れてると、自分を嘲笑って、少しだけ涙がこぼれた。
もしも、何かが変わるのであれば、ヒーローが来ることを望むよ。
そんなことは絶対に起きないと考えながら、ゆっくりと目を閉じようとしたその時、聞き覚えのある低い声が校舎裏に響いた。
「何やってんだよ」
それは、幼稚園からずっと一緒の川中和樹で、自分とは正反対の前向きな性格をした男だった。
中学2年生にしては高い背丈の和樹は、剣道部に所属していて、女子からは人気があり、男子からは恐れられていた。
それは、和樹が中学1年生の頃、剣道大会で優勝した時からの風習で、和樹には逆らわないという謎の暗黙の了解が生まれていた。
そんな和樹の姿を見て、俺を殴っていた男たちは急に血相を変えて逃げていった。
男たちが居なくなったのを見送った和樹は、俺の近くに来て笑顔をうかべた。
「もう大丈夫だぞ、結紀は俺が守ってやるから」
和樹のその言葉は、本来なら女の子に言った方がいい言葉だった。
だって、その言葉を信じてしまった俺は、中学2年生のその日を境に、叶わない恋心を抱くようになってしまったからだった。
ともだちにシェアしよう!