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第1話

何度だって、夢を見る。 それは淡い初恋で、叶わない恋の夢。 幼馴染の川中和樹に恋をしたのは、俺がまだ中学生の頃だった。 クラスのやつに目をつけられた俺は、校舎裏に呼び出された。 漫画やアニメではよく見る展開だけれど、自分の身にそんなことが起こるとは思っていなくて、どこか他人事のように考えながら、クラスメイトに殴られるのを受け入れていた。 抵抗したって意味が無い。 俺ができることなんてたかが知れてると、自分を嘲笑って、少しだけ涙がこぼれた。 もしも、何かが変わるのであれば、ヒーローが来ることを望むよ。 そんなことは絶対に起きないと考えながら、ゆっくりと目を閉じようとしたその時、聞き覚えのある低い声が校舎裏に響いた。 「何やってんだよ」 それは、幼稚園からずっと一緒の川中和樹で、自分とは正反対の前向きな性格をした男だった。 中学2年生にしては高い背丈の和樹は、剣道部に所属していて、女子からは人気があり、男子からは恐れられていた。 それは、和樹が中学1年生の頃、剣道大会で優勝した時からの風習で、和樹には逆らわないという謎の暗黙の了解が生まれていた。 そんな和樹の姿を見て、俺を殴っていた男たちは急に血相を変えて逃げていった。 男たちが居なくなったのを見送った和樹は、俺の近くに来て笑顔をうかべた。 「もう大丈夫だぞ、結紀は俺が守ってやるから」 和樹のその言葉は、本来なら女の子に言った方がいい言葉だった。 だって、その言葉を信じてしまった俺は、中学2年生のその日を境に、叶わない恋心を抱くようになってしまったからだった。

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