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「……っ、は、ん……ッ」  ちゅこちゅこと濡れた音が部屋全体に響き渡る。  もしかしたら隣の部屋にいるサディークにまで届いているのではないかと思うと気が気ではなかった。  簡易椅子に腰をかけたモルグの股の間に膝を突き、白衣の下、スラックスを緩めてその股座に手を添えては目の前の性器を奉仕することで精一杯だった。  言われてみれば、普段されることはあっても自分からこうして動くことはなかった。  それも自慰とはまるで勝手が違ってくるわけだ。もたもたと手の中のそれを扱くが、モルグはというとそんな俺を見下ろしてただニヤニヤと笑っていた。 「……っ、善家君さあ……」 「う、ご、ごめんなさい……っごめんなさい下手くそで……ッ」 「いやいやいいんだよ? 慣れない感じがまた初々しくて興奮するけど……」  勃たせることはできたけども、なかなか射精させることができなくてただ俺は恥ずかしさと目のやり場に困るのとでなんだかいっぱいいっぱいになっていた。  泣きそうになりながら扱けば、モルグは「早くしないとサディーク君が心配しちゃうよ~」と笑いながら俺の頭を撫で、急かしてくる。  そうだ、サディークも待たせてるのだ。そもそもモルグが開放してくれればいいだけの話なのだが、成り行きでこんなことになってしまった。 「……ぅ、うう……モルグさん……ッ」 「そんな泣きそうな顔されてもねえ、……あ、そうだ。ねえ善家君、口開けてよ」 「口……こうれすか?」  言われるがままぱかっと口を開いたとき、そのまま伸びてきたモルグの指がねじ込まれる。そのまま大きく口を開かせられ、驚いて目を丸くしていると、モルグはそのまま俺の後頭部を掴んで自分の下腹部へと寄せる。モルグの性器がすぐそば、唇に触れたのを感じた瞬間、そのまま開かれた唇の間に亀頭を咥えさせられ「んぶっ」と驚きの声が漏れた。 「ん、んむ……ッ!」 「これだったら、スーツも汚れずシワにもならなくて済むんじゃない?」 「ん、んんぅ……っ」  先走りが滲んだ亀頭はそのまま咥内、舌の上を滑るように喉の奥まで入ってくる。  こうしてフェラをするのは何度かあったが、それでも予期してなかったモルグの行動にびっくりして口の中に侵入してくる異物に堪らず喘いだ。その際の喉の締め付けが良かったのか、舌の上でモルグの性器が跳ねるのを感じた次の瞬間、先程よりも更に質量を増すその性器に背筋が震える。 「……ッ、ん、ふ……ッ」 「そうそう、いい子だねえ善家君。君の中、暖かくてトロトロで……僕も溶けちゃいそうだよ」 「ん、う……ッ、ふ……ッ」  先程よりも、より鮮明に伝わってくるモルグの鼓動、興奮にこちらまで充てられそうになったいた。  鼻で呼吸をしようとすればするほど咥内に広がる雄臭さに頭の奥が直接刺激されてるみたいにぼうっとしてしまう。朦朧とする意識の中、俺は考えることを放棄してモルグに言われるがまま舌の上のそれにちろちろと舌先を絡め、喉全体を使って締め付けた。 「ん、う……ッ」  モルグの内腿に手を添え、頭や喉を使って性器全体を愛撫すればモルグの呼吸は次第に浅くなっていくのだ。 「……っ、ん、そうそう……じょーずじょーず、また腕が上がったんじゃない? 善家君」 「ん、う゛……ッ」  小さい子供でも褒めるような優しい口調と優しい手付きで俺の頭を撫でるモルグ。舌の上で重量を増す性器に咥内を圧迫され、堪らずえずきそうになりながらも俺は性器が唇から外れないように唇を窄めて咥えるのだ。 「ッ、……は、善家君……ッ」 「ふ、ぅ……っ」  じゅる、じゅぷ、と嫌らしい音が辺りに響く。どくどくのモルグの鼓動を粘膜伝いに感じながらも、俺は舌で亀頭の窪みや凹凸の溝まで必死に舌を這わせた。次第に口の中には明らかに俺の唾液だけではないものが混ざり、口淫を続ければ続けるほど溢れそうになる咥内の分泌物を必死に喉の奥へと流し込んだ。 「っ、む、ぅ……ッ」  美味しいなんて思わないが、それでも咥内に独特のしょっぱさが広がっても以前のように抵抗感を覚えることはなくなっていた。寧ろ、先走りの量が増す度に少しは感じてくれているのかと安心すら覚えるのだからどうしようもないと思う。 「本当、美味しそうにしゃぶるねえ、君」  横髪を掬われ、耳の凹凸を指で撫でられると自然と腰が揺れしてしまった。  モルグが足を動かせば、丁度爪先が股の間に潜り込んでくる形になって一瞬動きが止まってしまいそうになる。 「――続けなよ、善家君」  吐息混じり、モルグは口にした。どくんどくんと脈打つ間隔は短くなっていき、射精が近くなっていることが粘膜越しでも分かる。  モルグの靴先に股の間、先程まで触れられていた下腹部をすり、と軽く撫でられれば、それだけで腰が浮いてしまいそうだった。 「……っ、ん、ぅ……ッ」  集中力が切れないように、必死に邪魔してくるモルグの足にしがみつきながらもノーハンドで頭を動かして性器にしゃぶりつく。  それでも俺の抵抗などたかが知れていた。  そして靴先をは股の間の膨らみまで上がってくる。踏みつけられるのではないかと一瞬戸惑ったが、寧ろそのまま優しく擽られ続け、下腹部がびくりと震えてしまうのだ。 「……ッ、ん、う……ッ、ふーッ、……ッ」  モルグはこちらを見下ろしていた。  自分がどんな顔をしているのかわからなかったが、考えたくもなかった。腰を揺らしながら、下着の中がぬるぬると濡れているのを感じながらも一刻も早く終わらせるために頬肉を窄め、先走りごと亀頭を吸い上げる。  瞬間、限界まで怒張し、顎をこじ開けていたそれは喉の奥で弾けた。 「ん゛、ふ……ッ?!」 「……は、ぁ゛ー……だめだよ、善家君。ちゃんとごっくんしてよねえ」 「ん゛、ぶ、ぅ゛……ッ」  驚いて顔を外しそうになったところを見計らったように俺の後頭部に手を回したまま、モルグはにっこりと微笑んだ。 「じゃなきゃ、そのスーツが汚れちゃうよ」なんて優しい顔で、喉の奥に精子を注ぎ込み終えたモルグはずろっと俺の口から性器を引き抜いた。そしてすぐ俺の口を閉じさせる。 「……ッ、ん、……ッ」 「そんでぇ、ごっくんしたらちゃーんと空になった口の中見せてねえ」  唾液ごと、舌の上に残ったものも一気に喉奥へと流し込んだ。詰まりそうになり、水が無性にほしくなりながらも俺は「ひまひは」と口を開いて空になった口の中をモルグに見せた。 「おお、偉いねえ善家君。よしよし。それじゃあ次はお掃除、してほしいなあ」 「この頑張り屋さんなお口で」と笑いながら性器を開いたままの俺の唇に咥えさせるのだ。  その表面は唾液と精液諸々でどろどろに汚れ、天井の細い照明の明かりを反射してぬらぬらと濡れていた。  出したばかりだというのにもう大っきくなっているそれに内心どきりとしながらも、俺にはもう抵抗するという頭はなかった。  わかりました、と答える代わりに今度は尿道に残った精液を吸い上げ、そのまま自分の口の中へと流し込んだ。  順応性は生きるためには必要なものだと幼い頃から聞かされてはいたものの、なんだか最近余計な知恵ばっかりついている気がするなあ……。  そんなことをぼんやりと考えながらも俺は流されるままモルグのものをお掃除することとなった。  そして、更に数分後。 「いやぁ~お待たせサディーク君、なにか変わったことはあった?」 「…………ありませんけど」 「あ、そっか。じゃあ丁度よかったねえ、善家君」 「…………ふぁい」  研究室備え付けの水道で口を濯いだものの、まだ喉や口にモルグの味が残ってるようで落ち着かない俺はなるべくサディークから離れて座った。匂いとかでバレたらと思うと恐ろしかったのだ。  それにしても、時間を確認すればお待たせどころではない。結構な間サディークを一人にしてしまったことに、俺は先程のモルグの言葉を思い出して色々後悔していた。  けれど、モルグの反応からして怒ってるわけではなさそう……なのか?  思いながらちらりと目を向ければ、めちゃくちゃサディークの顔が赤くなっているではないか。  ――ば、バレてる……?!  嫌な予感と緊張動揺その他に釣られて顔が熱くなるのを感じながら、俺はさっとサディークから顔をそらした。  そんなとき。 「ん? ……あー、とうとうきちゃったか」  座ったばかりのモルグは白衣から連絡用端末を取り出し、面倒臭そうに立ち上がる。 「どうしたんですか?」 「紅音君、もうそろそろ会えるかもよ」 「――え?」 「僕は一足先に会いに行ってくるけど、二人はここで待っててね。……大丈夫そうだったら僕の部下走らせるから」 「じゃ、失礼するねえ」とそのままツカツカと研究室を出ていくモルグ。  紅音君にようやく会えるのかとか、着替えなくて本当に大丈夫なのかとか、そもそもこの状態で俺とサディークを二人きりにするつもりなのかとか。色々言いたいことはあるが、俺の心の声は届かないまま目の前で自動ドアはぴしゃりと閉まった。  ……無常である。

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