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「も、モルグさんっ! 何言って……ッ!」 「善家君まっかっかだねえ。あ、僕は男してのアドバイスをしてあげてるだけだから」 「だ、だとしてもです……っ! サディークさんはサディークさんの良さがあって、モルグさんとは違うんですから……っ!」 「ふ~~ん? それってどんな?」  完全にこの状況を楽しんでるようだ。追い打ちをかけるが如く質問を投げかけてくるモルグに思わず言葉に詰まる。 「え、う……こう見えて実は結構優しいとか……っ?」 「こう見えて、ねえ?」 「……良平君」 「あ、あと……っ! 足がすごい長いです! 気配消すのも上手で……ッ!」  それから、えーと、と言葉を探す。  見る見るうちに更にサディークの顔が赤くなっているのを見て、しまったと凍りついた。 「す、すみません……っ、サディークさん、でも本当に俺はサディークさんのそういうところ好きですので!」 「…………………………」 「サディーク君、善家君が好きだって言ってるよぉ? 君ももっと気の利いたこと返してあげないと~」 「も、モルグさん! サディークさんで遊ばないでください……っ!」 「遊んでないよ、僕は至って真面目に人生について話してるだけだって」  そんなこと言っておきながら、話してるノリが飲酒してるときとそう変わらないのだから恐ろしい。  このままではサディークの尊厳に関わってくる。俺はこの空気を変えるため、モルグの白衣を掴んだ。 「ん?なになに?」と少しだけ驚いたようなモルグを引っ張り「モルグさん、こっちに来てくださいっ!」と小声でモルグを呼ぶ。  そして半ば強制的にモルグをサディークから引き離した俺はモルグとともに隣の部屋へとやってきた。  そこは主に研究資料などが置かれている物置部屋になっているようだ。壁全てを埋め尽くすような背の高い本棚や、積み重ねられた箱などが置かれていた。こんな場所に俺みたいなのが入っていいのかわからなかったが、モルグが「んじゃこっち使っていいよ」と招き入れてくれたのでノコノコついてきたのだけれども……。 「モルグさん、サディークさんに変なこと言うのやめてください……っ」 「おお、もしかして善家君……怒ってる?」 「お、怒ります……っ! あんな言い方されたら誰だって傷付きますよ」 「ん~? なんでえ? 俺は本当のこと言ってるだけなのに」 「モルグさんとサディークさんは違うんですから、だから……その……っ」  言っている内にどさくさに紛れてスーツの上から尻を撫でられてひくりと喉が震える。 「モルグさんっ」とその手を掴んで目の前の白衣の男を睨めば、モルグは猫のように目を細めて笑った。嫌な笑顔だ。 「いいや、同じだよ。あいつも君に興味持ってるの、僕分かるんだよねえ。君が色んな男と仲いいから妬いてるんだよ」 「っ、ん、そんなことばっかり言って……」 「君は鈍感な子だから気付かないのかもしれないけど、君が初めてじゃないって聞いたときのサディーク君の顔見た? すんごい傷付いてたよ」  言いながら尻の肉に指を埋めたり、谷間をすりすりと撫でてくる不躾な指先に堪らず腰を引く。不覚にもモルグに下半身を押し付けるような形になってしまい、それに気づいたときには遅かった。 「……っ、モルグさん……」  抱き寄せるように尻たぶを鷲掴みにしてくるその手は、嫌らしく片尻を揉みしだくのだ。 「うーん、やっぱりいい触り心地だねえ」と楽しそうに笑いながら。 「こ、こんなところで……ッ」 「ん~? そのために二人きりになろうとしてくれたんじゃないのぉ?」 「ち、違います……俺はただ……っん、ぅ……ッ」  言い終わるよりも先に、ちゅ、と唇を塞がれる。 「っ、ん、ぅ……っ、お、れ……はぁ……ッ、む、ぅ……ッ」  言葉を邪魔するよう、唇を舐めるモルグの舌はそのまま口の中に入ってきては俺の舌に絡みついてくる。  舌の先端を絡め合わせるように執拗に突かれ、舐められ、先っぽを引きずり出されてはそのまま音を立てて吸われれば頭の中がじんじんと熱く痺れてくるのだ。 「っ、は、ン、……も、モルグさ……ッ」 「本当いい顔するよねえ、善家君。……ほら、今度は君から舌を絡めてよ」 「っ、や、だ、めです……こんな場所で……ッ」 「駄目? どうして?」 「さ、サディークさんが……ッ」  扉一枚隔てた向こう側にはサディークが待っている。  それなのに、こんなことをして待たせている場合ではない。そう言いたいのに、モルグはまるで気にした様子はなく「大丈夫だよ」なんて根拠のない言葉を口にするのだ。 「……どうせあいつも勘付いてるよ、君と僕がどっかに行って戻ってこないってことで頭の中エロい事でいっぱいだろうね」 「も、モルグさんと一緒にしないでください」 「ん~? 違うよ、僕が考えてるのは君のことだけだから」 「ね」なんて言って、ぷちゅ、と音を立ててまた軽く唇を吸われる。今度はその唇は簡単に離れることはなく、更に執拗に、喉の奥まで味わうように長く薄い舌で口の中、舌の根本まで舐め回されるのだ。  ――本当に、この人は。  今更呆れるわけではないが、どうも一度ペースを狂わされると敵わない。どさくさに紛れてスーツの下、シャツ越しに胸を指で撫でられ「んんっ」とくぐもった声が漏れる。 「……っ、ふ、ぅ……ッ」 「せっかくサディーク君のために取っておこうと思ったけど、こんなかわいい顔されたら流石に無理かなぁ」 「も、るぐさ……」 「つまみ食いくらいいよね」 「っ、ん、や、だめです、これ以上は本当に……ッ」  シャツ越しに主張し始める乳首をすりすりと撫でられ、胸が震えた。指から逃げるように後退るが、背後の壁がそれを邪魔して逃れることができなかった。あっという間にモルグと壁に挟まれたまま、尖り始めていた乳首を柔らかく摘みあげられた瞬間、ぴりっとした鋭い快感に「ぁっ」と小さな声が漏れる。  慌てて口を塞ぐが、遅かった。 「っ、は、ぁ……ッ、ん、や、めてください……ッ、モルグさん……ッ」 「ああそれいいね、ちょっとキた。なんだか君をイジメてるみたいで興奮するなあ」 「も、なに言って……ッ、ん、ふぅ……っ」  スーツの前を開かれ、カリカリと両胸の乳首を柔らかく引っ掻かれる度に腰が揺れる。胸を触られてるだけなのに下半身に熱が集まり、もどかしくなるのだ。  ――直接触ってほしい、なんて口が裂けても言えない。 「っ、は、……ッ、モルグさん……っ」 「癒やし効果だよ、これって。君の胸を触ってると疲れが取れるんだよねえ」 「そ、そんなわけ……」 「科学的に証明されてるんだよ、これは」 「ん、ぅ……ッ、そ、そうなんですか?」 「そーそー」と言いながら掌全体で右胸を揉みしだかれ、突起の先端をシャツが掠めるだけで身じろぎしてしまいそうになる。  そのまま感触を確かめるように揉まれれば、自然と呼吸が浅くなった。 「……っ、で、でも、やっぱりだめです……っ」 「んー? なんで?」 「し、仕事中……なので……ッ」 「僕が許可しても?」  くに、とシャツ越しに乳頭を押しつぶされる。そのまま乳輪へと埋めるように指先で押しつぶされ、胸の内側を穿られれば堪らずモルグの腕にしがみついた。 「お、すぐ勃ってきた」と笑いながら片方の胸も同じように乳首を穿られ、「モルグさん」と震えた声で呼び止める。 「あは、腰がくがくしちゃってるね。……こんな調子じゃ仕事なんて無理じゃない? 一回抜いておこうか?」 「ら、いじょうぶ……れす」 「呂律回ってないし。ほら、お尻の穴もきゅうってして寂しそうだよ」 「ぅ、んん……ッ!」  言いながら、腰へと伸びてきた手はスラックス越しにお尻を撫でてくるのだ。いつもと変わらない柔らかい声なのに、それが余計いやらしく聞こえてしまうのはモルグだからだろうか。  耳を舐められ、慌てて体を離そうとすれば更に抱き締められる。拍子に、腹部に押し付けられるモルグのものの感触に息を飲んだ。 「も、モルグさん……」 「……ごめん、善家君。勃起しちゃった」 「な、なんで」 「なんでってそりゃあ、不可抗力みたいなものじゃない?」 「こんなに可愛い反応されちゃったらさ」と耳の穴まで舐められれば、ぞくりと全身が震えた。そのまま腰を揺さぶられ、「ねえ、いい?」と耳元で囁かれる。  なにが、なんて聞かずともわかってしまった。スラックス越し、尻の割れ目に押し付けられる膨らみに俺は慌てて首を横に振る。 「い……ッ、だ、だめです……ッ! 一応勤務中なので……ッ!」 「勤務中じゃなかったらいいんだ? 挿れても」 「……ッ、う、そ、それは……ッ」  ちゃんと断らなければならないと分かってるが、モルグに触れられてると段々なにが正しいのか分からなくなってきてしまうのだ。恐ろしいことに。  この間のモルグとの行為が蘇り、下腹部にきゅっと力が入ってしまう。 「挿れたいなあ……ねえ、駄目?」 「だめです、す、スーツが……」 「洗濯したらいいよ、汚れたら」  なんで汚す前提なのかと恐ろしくなった俺は、慌てて体を捻ってモルグの下腹部に手を伸ばす。  モルグも予想してなかったようだ。そのままテント張ったそこに触れれば、「え」とモルグは目を丸くした。 「……っ、い、挿れるのはだめですけど……手とかで、なら……」  そう、すり、と頂点に当たる部分に指を這わせれば、スラックスの下でぴくんとモルグのものが反応するのがわかった。  そして、一瞬固まっていたモルグは吹き出す。 「――……ふッ、ははッ! 本当に君っていい性格してるねえ」 「も、モルグさん……?」 「いいよぉ。……君に免じて、今回はそれで我慢してあげるね」  そのまま俺の手首を掴み、掌ごと覆うように握ってくるモルグ。指を絡め取られ、そのまま性器の膨らみごとを握らせられる。 「それじゃあ、よろしくね」  善家君、と耳朶へと柔らかく押し付けられる唇のこそばゆさに震えながら俺は「はい」と声を絞り出した。

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