121 / 179

47※

「っ、ん、うむ……っ!」  触れられたらまずい、と分かっているのに、この体勢ではサディークから逃れることはできない。  手袋越し、伸びてきた手にそっと顎下から頬まで、顔を持ち上げるように掴まれる。ひっくり返る視界の中、視界の上から落ちてくるように反りたった性器から逃れることはできなかった。 「っ、ん、む、ぅ……」  細い指に唇を割り開かれ、そのまま唇へと亀頭を押し付けるようにねじ込まれていく。  これがサディークさんの、とか考えたくなかった。こんな形で触れるなんて思わなかった。  余計なことを考える暇もなくて、必死に顔を逸らそうとするが、逃れられない。 「っ、は、……ッ、熱……」 「ん、う……っぶ、ぅ……ッ」  先程のデッドエンドの感触が残ったままの咥内にねじ込まれる熱の塊を頬張り、拒むこともできないまま喉でそれを受け止める。  サディークが息を漏らすのを見て、「な、いいだろ?」とデッドエンドは凶悪な笑みを浮かべた。 「は、お前が気に入ってたそいつ、野郎のもん咥えるのに相当慣れてるみたいだな」 「……っ、別に、俺には関係ないだろ」 「そうかよ」 「……」  する、と伸びてきた指は柔らかく顎を捉えたまま、舌の上を這ってゆっくりと喉の方まで進んでくるのがわかった。  苦しくないわけではない、それでもサディークは気遣ってくれているのがわかった。少しでも負担を軽くしてくれようとしてるのだろう。  この状態でも、俺の気持ちが伝わっているのだろうか。そうふとサディークを見上げれば、性器越し、こちらを見下ろすサディークと目があった。そして、頬を赤くしたサディークはばつが悪そうに目を瞑るのだ。 「……っ、良平……」 「ん、う゛……っ! ひ、む゛うッ!」  拍子に、下からデッドエンドに思いっきり突き上げられ、思わず喉が締まってしまう。それがサディークにとっては堪らなかったようだ。喉の奥、膨らんだ性器が脈打つのを感じる。 「っ、おい、ちゃんとサディークの舐めろよ、遠慮してんじゃねえだろうな……ッ!」 「……っ、ん゛、う」 「ぅ、デッド、余計なことを……っ!」 「サディーク、お前まさかこいつのこと本気で気に入ってるなんて言わねえよな」 「……っ」  サディークが言葉に詰まったほんの一瞬、「まじで?」とデッドエンドが馬鹿にしたように笑ったのもつかの間。サディークは絞り出すように「ないよ」と声を出す。  サディークさん、と喉まで出かかったが、言葉にすることはできなかった。  デッドエンドは「そうかよ」と嗤い、そのまま俺の腰を掴む。 「っふ、ぅ、んん゛……っ!」 「だってよ、モブ。残念だったな」 「……っぅ、ん゛……ッ!」  なんだか振られたような気分は払拭することはできなかったが、今はそんな傷心に浸っている場合ではない。  がつがつと奥を亀頭で押し上げられる度に喉が苦しかった。そんな閉塞感も慣れてきたら興奮剤になってしまう。  息苦しさに滲む視界の中、そのままペースを上げ、俺の体をオナホかなにかのように乱暴に抱きながらデッドエンドは二度目の射精を迎えようとしていた。  サディークの能力がどこまで読むことができるのか。リアルタイムで思考している上澄みだけを読めるというものならば不幸中の幸いである。  なんたって俺は、今はこの状況をどうにかすることを考えることでいっぱいいっぱいなのだから。 「出すぞ」とデッドエンドに腕を掴まれ、そのままがっちりと根本まで深々と突き刺さった性器。そこから噴き出す二度目の精液に思考は一度リセットされる。どく、どく、と精液伝いに粘膜へと流れ込んでくるデッドエンドの鼓動をより近く感じた。  それと同時に喉の奥、唾液で濡れていたサディークの性器がぶるりと舌の上で震えるのがわかった。出される、と思った次の瞬間、咥内からずるりと粘膜を摩擦しながら引き抜かれる性器。口を閉じることを忘れ、舌を出したままサディークを見上げた次の瞬間、赤く腫れた亀頭の窪みから勢いよく白濁が溢れる。  視界が翳ったのと、顔面にそれが降り注いだのはほぼ同時だった。慌てて目を瞑れば、そのまま頬にぶっかけられる精液の熱に思わず下半身が震える。 「っ、は、……っ、ご、めん」 「ぶっかけるやつがあるかよ、洗わせなきゃなんねえだろ」 「で、デッドだって……なに出してるんだよ、こんなところ他のやつらに見られたら……っ」 「あーあーもううるせえ、ほら、俺が温めてやったからお前挿れていいぞ」 「俺のニ回分の精子が残ったあとで良かったらな」とデッドエンドは笑ってそのまま俺の腿を掴み、大きく左右の足を開かせるのだ。放心するサディークの目の前、口を開けたまま精液を垂らす肛門を晒すような体勢に、思わず顔に熱が集まった。  サディークはそんな俺の下半身に目を向け、息を飲む。  引かれてる、嫌われても仕方ない。こんな醜態晒したんだ。  恥ずかしくて堪らないが、それでも再び芯を持ち始めているサディークのものを見た瞬間胸の奥が熱くなる。 「なんで躊躇してんだ? サディーク」 「……っ、……うるさい、黙ってろデッド」 「手袋も着けたままだよな、外せよ。それ」 「そのままこいつを犯すんだよ」これはリーダー命令だ、と言わんばかりの高慢なデッドエンドの態度にサディークは慣れてるのだろう。どこか諦めたような顔をして、そのままサディークは手にしていた薄手の手袋を外すのだ。現れたのは骨っぽい細い指先だ。  デッドエンドに促されるがまま、開かれた俺の股の前に膝立ちになったサディークはそのまま正面から俺を覗き込んでくる。  「っ、さ、ディーク……さん……」 「良平……俺のこと、嫌いになって」 「そ、んなこと……っ」 「……今から、もっと酷いことするから」  サディークさん、と再び名前を呼ぼうとした瞬間、視界が暗くなる。そして、代わりに柔らかいものが唇に触れた。  ――サディークさんに、キスをされてる。 「……っ、ふ、ぅ……ッ」  顔が、熱い。真っ白にもやがかる頭の中、まるで割れ物にでも触れるかのような優しい手付きでサディークに撫でられ、ぞくぞくと胸が震えた。 「っ、ん、う……っ!」 「よ、しひら……っ」 「はぁ、……っ、サディークさん、お、おれ……っ」  こんなこと、考えちゃ駄目だと分かっているのに。  サディークにキスをされて、まるで嫌な気がしない自分に驚いて戸惑った。そして、サディークにもそれが伝わってしまったのだろう。目を細めたサディークは、そのまま「お前の心、うるさすぎ」と呟くのだ。 「っ、ゃ、だ、だめ……聞かないで、くださ……っ、ん、む……っ!」  ちゅ、ちゅ、と何度も唇の薄皮ごと吸われ、甘く舌先で舐られる。デッドエンドの乱暴なフェラとキスの後だったからかもしれない、優しいその触れ方に胸の奥がじんわりと熱くなり、栓をなくした下半身がずぐりと重く痺れ始めるのだ。 「は、んん……っ、サディークさ……っ、ぁ……っ」 「……っ、は、良平……」 「っ、サディークさん……っ、待ってくださ……ッ!」 「……キス、好きなの?」 「っ、う、ゃ……っ、んん……!」  恥ずかしい、恥ずかしい。我慢しなくちゃ、と思えば思うほど言葉と感情は溢れてくる。  興奮したように呼吸荒くなるサディークに顎を掴まれ、そのまままたキスをされる。ちゅぷ、と濡れた音を立てて粘膜を舐られるだけで下半身が疼いた。中に触れてほしい、なんてほんの一瞬でも考えてしまったのがサディークにそのまま伝わってしまったのだろう。逆上せたみたいに顔を赤くしたサディークは息を吐き、そのまま俺の下半身に手を伸ばすのだ。 「っ、ん、ぅ……っ!」 「こ……ここ、触ってほしいんだ」  長く、すらりと伸びたサディークの指が口を開閉させていた肛門に触れる。無理やりな抽挿によって捲れあがり、精液を溢れさせるそこに指を這わされ、そのままつぷりと挿入させてくるサディークにびっくりして思わずびくんと背筋が伸びた。  何も考えたくないのに、意識すればするほど自分で抑えられなくなっていく。そして全てサディークに伝わってるのだと思うと、恥ずかしさでよりおかしくなりそうだった。 「っ、ぁ、や、サディークさん……っ!」 「は、デッド……まじで、出しすぎ」  中に溜まった精液を掻き出すサディークに、「そりゃ悪かったな」とデッドエンドは舌打ちをする。そして、俺の前髪を掴んでそのまま鼻先に性器を突き付けてくるのだ。 「ほら、綺麗にしろ」と顔面にかかったサディークの精液をぬるりと俺の顔になすりつけるデッドエンド。精液で濡れ、いやらしく光るその性器から目を逸らすこともできなかった。  言われるがまま口を開き、舌を伸ばす。そのまま性器に絡みついた精液を犬のように舐めとっていくのだ。 「っふ、ぅ……っ、んん……っ」  こんなところ、誰かに見られたりでもしたら。  そう思えば思うほど頭が真っ白になっていく。  中に溜まった精液を掻き出したサディークは、そのまま指を引き抜いた。 「っ、ん、う……っ!」 「おいこら、舌止めんなよ」 「ん、んん……っ」 「は……っ、良平……」  感情が、意識があっちこっちへと飛びそうになる中、閉じることも忘れて開いたままの下半身、サディークの亀頭がぬるりと触れるのがわかって身体が震えた。 「ん、う……ッ」  じゅぷ、と口の中いっぱいにデッドエンドのものを咥えさせられたまま、持ち上げられた下半身に押し付けけられる性器に息を飲む。 「い、挿れるから……これ、今から、良平の中に……痛かったら言って」 「なるべく、善処するから」興奮気味に声を上擦らせたサディークは、そのまま柔らかくキスするみたいに亀頭で肛門を突くのだ。このまま少しでも力を入れれば深く挿入されそうになる体勢、俺は拒むこともできなかった。なすがまま、サディークに腰を掴まれ、そのまま埋め込まれる性器の熱に身震いをする。 「ふ、ぅ……ッ! んん……ッ!」 「っ、は……っ、あっつ、良平の中……っ」 「ん゛んう……っ!」  デッドエンドの精液で濡れたそこを滑るように、肉襞を掻き分けて深くまで突き刺さる性器。  奥に進むのがいっぱいなのだろう、それでも散々過敏になっていたそこを性器で摩擦されるだけで全身が打ち震える。 「っ、ふ、ぅ゛」 「は、悪くねえだろ、こいつのナカ……っ! どこの誰に仕込まれたのか知らねえけど、無理矢理犯されて喜んでるなんてどんだけマゾ野郎だ? なあ」 「ん、う゛うぅ……っ!」  喉の奥いっぱいまで入ってくるデッドエンドの性器に顎が開かされ、息苦しい。真っ白に染まっていく頭の中、体内に収まる二本の性器の感触だけがやたら生々しかった。  デッドエンドの言葉に、ほんの一瞬サディークの表情が引きつったのもつかの間。サディークは息を吐き、そしてそのまま俺の腿を掴むのだ。 「……っ、良平、お前……っ、」 「っ、ん゛、ふ……っ」 「……そうか、……っ、お前はそういうやつだったのか……ッ」  どんな声がサディークの耳に届いているのか分からない。それでも、デッドエンドの言葉につられて今までのことをほんの少しでも浮かべてしまったことがサディークに伝わってしまったのかもしれない。  そう理解した瞬間血の気が引き、そして、いきなり奥までねじ込まれる性器に思わず飛び上がりそうになる。 「ん゛、ぅ゛」  拍子に締め付けてしまった咥内、小さく呻いたデッドエンドはそのまま俺の喉から性器を引き抜いた。拍子に、丁度奥、臍の裏側の辺りを亀頭で押し上げられ「ぉ゛、ぐ」と声が喉奥から溢れてしまう。 「っ、さ、でぃ……っ、く、さ……っ、ぁ゛……ッ!」 「そりゃ、慣れてるわけだ……っ、なあ……もしかして俺のことも弄ぶつもりだった?」 「ち、が……っ」  違います、と言いかけた拍子、伸びてきた手に胸を鷲掴みにされ、呼吸が止まる。シャツ越しに乳首を抓られながら、奥の突き当りを亀頭でぐりぐりと押し上げられるだけで頭の中で無数の色とりどりの火花が散るようだった。 「ぁ゛、さ、サディークさ、ん゛、ひ……っ! ぅ゛、サディークしゃ、ぁ゛」 「……っ、良平」 「ん、む……っ」  伸びてきた手に頬を撫でられ、そのまま唇を重ねられる。嫌われたくないのに、サディークにこれ以上心の中を読まれたくないのに、思考があふれる。  ぐちゅぐちゅと汚れた唇を重ねられ、無意識の内に舌が伸びる。サディークはほんの一瞬身体を緊張させ、なにかを言いかけたがやめる。そしてその代わりに、深く俺にキスをしたのだ。 「……っ、ふ、ぅ……っ! ん、う゛……ッ!」  良平、とサディークに名前を呼ばれる度に下腹部に力が入ってしまう。長いストロークに耐えきれずに床の上仰け反る俺を捕まえ、デッドエンドはこちらを見下ろすのだ。  そして、やつが笑った次の瞬間、腹の奥でぶちまけられる熱に意識が遠退く。  ――敵陣地で気絶するのはまずい。  わかっていたが、それでも連続しての性行為に耐えきれるほどの体力は俺にはなかった。

ともだちにシェアしよう!