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「やめろ、出て行けッ! この……ッ!」  胸倉を掴む腕を引き離そうと爪を立てるが、鋼のように硬く爪が立たない。  次の瞬間、固めた拳で腹を殴られる。  ハンマーかなにかでぶん殴られたかのような衝撃に目の前が真っ白になり、押し潰された内臓から胃液が込み上げてきた。 「ぉえッ」  腹に穴でも空いたのではないかと思うほどの痛みに手足から力が抜け落ち、気付けばジャックの足元に蹲っていた。  胃酸が口の中に広がる。  咄嗟に逃げようとするが、あまりの痛みに手足に力が入らなくてその場によろめきそうになったところをジャックはまるで球蹴りでもするかのように鉄板仕込みの革靴の爪先を僕の腹にのめり込ませるのだ。  足だけでもだけでも僕の身長の半分以上はあるのではないかと思うほどのリーチの長さに、逃げ場などなかった。  いとも容易く吹き飛ぶ体は薄汚れた石の壁にぶつかり、背中に激痛が走る。 「っ、は、ぐ……ッ!」 「ハァ……いい気味じゃねえか、王子様よぉ。お前、泣いてる顔は悪くねえな」 「こ、ろす」  そう痛みに引き攣る喉から声を振り絞れば、ジャックの表情から笑みが消えた。  次の瞬間、手にしていた鉄の棒で肩を殴られる。 「ぎ、ぅッ」 「あーアッタマきた。本当はちっとは優しくしてやろうかと思ったが、ババアが死んでも全然変わんねえのな。泣いて命乞いくらいしてみせろよ」 「お前みたいな罪人なんかに命乞いするくらいなら……死んだ方がマシだ……ッ!」  今の一発で肩の骨が折れたかもしれない。  殴られた箇所が痺れるように痛み、その箇所から指先までの感覚がない。  それでも、こんな叛逆者相手に媚び諂うつもりは毛頭なかった。  ――母は、取り押さえられても最後まで何も言わなかった。  ただ憎悪で煮え滾るその目でアリスを睨み、群衆を呪っていた。  最後まで屈しなかったその姿を見て、相手の下手に出て生き延びろうと思えるはずがない。  氷のようなジャックの目が僕を捉える。  軽薄な印象を与えるにやついた笑みが消えれば、そこには人を殺すことに躊躇ない軍人の顔があった。 「死んだ方がマシか……そりゃねえぜ、王子様」  鉄の棒で骨を砕き、殴り殺すつもりか。  それとも腰に帯剣した得物で母のように首を切り落とすつもりか。  逃げ場を探すが、目の前を立ち塞ぐジャックのせいで経路は封鎖されてる。  ジャックは腰の剣に手を掛ける。  ――ああ、ここまでか。  ゆっくりと引き抜かれる剣に、映る自分の疲れ切った顔が映ったと思った瞬間。  上半身に突き付けられた剣は、胸元を大きく切り裂いた。  襲い掛かる痛みと死を受け入れようと唇を噛んだとき、一向に痛みが来ないことに気付いた。  それどころか。 「っな、何をしてる……?!」  切り目の走った服をそのまま破られ、ぎょっとした。  生まれた時から他人に肌を晒したことのない僕にとって、殴られるよりもそれは耐え難いことだった。  ジャックの太い指に胸元を撫でられ、あまりの気持ち悪さと恐怖に慄く。 「死んだ方がマシだ、っつったよなぁ? お前。  ――だったら、もっと死んだ方がましだって思うようにしてやるよ」 「は」  何を言ってるのだ、この男は。  まるで意味がわからなかった。  真っ白になる頭の中、ただ途轍もなく嫌な予感がして、とにかく目の前の男から逃れようと後ずさる。  が、伸びてきた手に首を掴まれ、そのまま壁に押し付けられてしまえばびくともしなかった。 「や、めろ、離せッ」 「叫べよ、どうせ誰も来ねえよ。お前は、ここで俺に犯されるんだよ。女みたいに腹這いになってな」  何を言ってるのだ、この気狂いは。  品性の欠片もないその台詞に顔に熱が集まる。 「巫山戯るな」とジャックを突き飛ばそうと伸ばした腕を掴まれ、引き寄せられる。  鼻先に近付くジャックの顔に、至近距離で見詰めてくるその目に耐えられず顔を逸らそうとし、強引に上を向かされた。  それでも尚目を瞑って視線から逃れようとした瞬間、唇に熱く、濡れた肉の感触が触れる。 「っう、んんッ?!」  舐められてる、そう気付いた瞬間血の気が引いた。  目を見開けば今度こそやつに唇を重ねられ、厚く、長い舌で唇ごとこじ開けられる。  歯列をなぞり、咥内いっぱいに咥えさせられるその舌はこちらの意思も無視して喉奥まで侵入してくるのだ。  吐き出したいのに、自由が効かない。  破れた服の下、剥き出しになった胸を分厚い掌で乱暴に揉まれ、全身が粟立つ。 「ふ、ぅ、んんッ」  手足を動かそうとするが、筋肉の壁みたいな男に抱き締められれば鍛えていない僕の体など太刀打ちできるはずがなかった。  憎い相手に口吸いをされてる、それも、こんな形で。  口の中を舌で隈なく舐られ、逃げようとしていた舌ごと根元から絡め取られてはそのまま性器かなにかのように乱暴に愛撫される。 「ぅ゛、んん゛……ッ!」  乳頭を乳輪ごと扱かれ、引っ張られれば細い針が突き刺さるような刺激が走った。  口の中溢れ出す唾液すらも舌ごとジャックに吸われ、一方的に掻き回される。  舌に歯を突き立ててやりたいのに、口いっぱいに頬張らされる舌のおかげで閉じることすらできない。  ぐちゃぐちゃと舌を挿入したまま、唾液を流しこもうとしてくるジャックに震えた。  引き離そうとするが、力が入らない。  吐き出したいのに強制的に開かされた口と喉はそれを受け入れることしかできず、流し込まれる大量のジャックの唾液に嫌悪感のあまり吐き気が込み上げる。  そこでようやく舌が引き抜かれ、えづいて吐き出そうとするが、既に器官を通り肚の中へと落ちたそれは戻って来ない。  口をゴシゴシと擦る僕を見て、ジャックは下品な笑みを浮かべた。 「っは、小せえ口。チンポすら入んねえようなお上品な口だな」 「っき、さま……ッ」 「けど、悪くねえな。親子揃ってクソ野郎だったが、面だけはいいときたもんだ。母親似でよかったな、お前。……こりゃ、泣かせ甲斐がありそうだ」  舌舐めずりをする男に、怒りのあまり言葉を失う。  自分だけならまだしも、母――女王まで侮辱するとは。  殺してやる、絶対に。  咄嗟に剣を奪おうとするが、やつはすぐにこちらの行動に気付いた。 「油断も隙もねえな」 「っ、はなせッ」  腕を掴まれ、そのままジャックはどこからか取り出した拘束具で、頭上へと捻り上げられた両手首を締め上げようとする。  慣れた手つきだった。  罪人のように腕を上げさせられ、無防備になる胴体に無意識に腰が引けてしまう。  それを見て「いい格好だな、王子様」とジャックは厭らしく笑うのだ。 「どうした? 腰が引けてるぞ。王子なら王子らしく胸を張ったらどうだ? ……この小せえ胸をな」  剥き出しになった乳首を指で挟まれ、その先端を指先で揉まれる。  皮膚が引っ張られるような痛みに堪らず上半身が仰け反った。 「っ、や、めろ……っ!」 「おお、硬くなってきた。見てみろよ、小せえくせに頑張って勃起してんぞ、お前の乳首」 「こ、の……ッんんぅ……!」  コリコリと執拗に指で転がされ、胸の先端と腹部がじんじんと痺れるように疼き出す。  不愉快なのに、痛いだけなのに、この男に好き勝手体を触られてるという事実にどうにかなりそうだった。 「っはな、せ……ぇ……」 「あれ? 声に覇気がなくなってきたな、さっきまでの威勢はどうした?」 「……ッぅ、ひ……ッ!」  きゅっと乳首を抓られた瞬間、自分のものとは思いたくないような情けない声が漏れる。  血の気が引いた。  --どうして、あれほど堪えようとしたのに。  蒼褪め、咄嗟に口を覆おうとするが、両腕は拘束されたままだ。  顔を逸らそうとすれば、更に執拗に両胸の突起を捏ねられる。  痛みで散々敏感にさせられたそこは軽く先っぽを掠めるだけでも痛みが走るほどだった。  上半身を捩り、ジャックの手から逃れようとするがジャックは俺を離さない。  それどころか。 「……なんだぁ? 今の可愛い声。なあ、もっと聞かせろよ」 「い、やだ、やめ……っ、ろ……」 「そうじゃねえだろ」 「っ、んぅ、ふ……っ、んん……ッ!」  必死に声を殺そうと唇を噛むが、呼吸まで我慢することはできなかった。  両乳首を柔らかく潰され、そこを円を描くように捏ねられればそれだけで頭の奥がジンジンと痺れ始める。  ――なんだ、なんだこれ。  痛いだけだったはずなのに、先っぽを柔らかく揉まれるだけで胸の奥から何か溢れ出すみたいに熱くなって、次第に呼吸が乱れ出す。  下腹部がもぞもぞしてきて、腹の底から多数の虫が這い上がってくるような違和感に耐えられなかった。  堪らず前のめりになれば、僕の体を抱き留めたジャックはそのままオモチャで遊ぶように両胸を執拗に揉みしごいた。 「ん、く、っふ……ぅ……っ!」 「どうしたぁ? 王子様。……腰、揺れてるぞ」 「ち、が……ぁ……」 「何が違うんだ? ああ、可哀想に。真っ赤に腫れてんじゃねえか」  ――お前のせいではないか。  そう言い返そうとしたとき、ジャックはあろうことか僕の体を抱き、そのまま片方の胸に唇を寄せたのだ。 「な」  なにを、と目を見開いたと同時だった、やつは躊躇いなく人の乳首を咥えた。  大きな口に乳輪ごと噛み付く勢いで咥えられ、包み込むような熱にギョッとするのも束の間。  硬くなった先っぽを吸われ、そのまま口の中で先端部を舌で舐め回される。  ジュルルル!と食われる勢いで乱暴に愛撫され、腰が、胸が、大きく震えた。

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